報告 佐藤 恵亮





梅雨明け一発目にどこへ行くか?毎年5、6月頃頭を悩ませる。 とは言ってもいかに楽しく、いかによい釣りができるかということで悩むのだから幸せな悩みだ。
今年も早々から候補となる沢が幾つか挙がってはいたものの、なかなか一箇所に絞りきれていなかった。 そこで7月9日(水)、緊急会議が川越のとある焼き鳥屋にて開かれた。 久しぶりのナイトパトロールではあったがどうしても行き先を決めなければならない。行ってみたい渓はたくさんある。 しかし、釣りができる期間は限られている。結局3人の意見が一致したのは見附川だった。
見附川には以前一度だけ行ったことがあった。 私がこの源流での遊びに足を踏み入れて2年目くらいの9月だ。 その頃は、右も左もわからずみんなについていくことで精一杯だったが、この川のことは忘れたことがなかった。 というのも、それまでもそしてその後も経験したことのない『寒さ』に遭遇したからだ。 山形道を走っている間、時々出てくる温度計の表示が8℃、6℃・・・最後の温度計は2℃を示していた。 テン場ではシュラフに入る直前に熱々の湯をペットボトルに入れ湯たんぽを作った。 それでも寒くてシュラフごとザックの中に足を突っ込みシュラフカバーの口をギッチリ閉めた。 私はなんとか眠れたが他のメンバーの中には日が昇るまで眠れなかった方もいた。 今となってみれば楽しい思い出だ。
今回は、そのときのルートではなく隣を流れる根子川に注ぐ日暮沢を詰め上がり、山越えで見附川中流コバラメキ沢のすぐ上に降りるルートをとることとなった。
車止めとなる日暮沢小屋に到着したのはAM5:30を過ぎていた。 広いスペースに車が4台駐車しており先行者がいるのではないかと不安がよぎるが、気を取り直してまずは用を足しに小屋の中へ。 3階建ての立派な建物できれいに整備されていた。なんとトイレは水洗だ。 私たちが到着して間もなく一台の軽自動車が到着した。 けんちゃん(菊地)が話を聞くと、この小屋を管理している方で、我々が山越えで見附川に行くことを話すと「気をつけてな!」と東北独特のイントネーションで暖かく声を掛けてくださった。



3階建ての立派な日暮沢小屋


順調に沢を登る。 小さな沢も高度を確認しながら地図と照らし合わせていく。 ルートを間違え目的の沢よりひとつ上流の沢を下降すると、滝が連続し苦労するとの情報を事前に聞いていたため慎重になる。 一箇所だけ右側から入る沢で悩むが入り口は木に覆われ狭いのと、左の沢もその先で同じ方向にカーブしていることから左の沢を選択する。 だんだん高度を上げていき、水が枯れてくるとかなりの急勾配となる。 木につかまりながらピンソールを装着していなかったことを後悔。 なんとか荷物を降ろせる場所を見つけ装着する。「やっぱり違うなあ。」効果を実感する。
コルに到着し下降開始。 左の沢に行かないよう右方向に進路をとる。 ヤブを漕ぎ小さな沢に導かれひたすら下る。 2箇所ほど安全のためにお助けテープを使用する。本流との出合いは滝だった。 手前から踏み後をたどり本流に降り立つ。 車止めから休憩時間を含め3時間30分。 前夜からの雨のため、かなり増水しているようだ。

  
日暮沢を詰める 我慢の登りだ

 
本流に向けて滝を下降する                      見附川に到着 水量が多い


早速けんちゃんが新調したテンカラ竿を振り毛鉤を入れるが、イワナは留守だった。とにかくテン場まで行くこととする。 暫く下流に向って歩くと通らずがあり、対岸の岩に古いロープがぶら下がっている。 「ああここかぁ。」 隊長(高橋)の中で過去の記憶が蘇る。 そしてすぐにコバラメキ沢登場! 「佐藤があの時掴んだ枯れ木が折れて、まっさかさまに落ちそうになった所だよ。」と隊長。 「あっ、あそこかぁ!」私も記憶が蘇る。 あの時はすぐ後ろにいたメンバーの1人がなんとか私の体を支え耐えてくれたおかげで事なきを得たが、下から見てゾッとしたことを鮮明に思い出した。
テン場はそこからすぐのところだった。 砂地の部分は以前より少し狭くなったものの、広い河原があり快適な場所だ。 何より先行者がいないことでほっとした。
遅い朝飯を頬張り、テンの設営をしてしまう。 さて、釣りに出かけようとした時だ。 「オカズは頼む!」「えっ!?」隊長はテン場前でちょこっと釣りを楽しみ、そのあとは昼寝をすると宣言。
けんちゃんと私は少し下流まで下ってみることにする。 ここは!という場所では竿を出してみるが全くアタリすらない。深い淵では餌を沈め暫く粘るがぜーんぜん。しかもけんちゃんはヘツリに失敗しドッボーン! テンション下がりまくりでテン場まで戻った。
隊長は寝ていたが、イワナが数匹網の中で泳いでいた。「これじゃいかん!」と上流に少しだけ釣り上がり、なんとか今夜のオカズ分だけ確保することができた。
着替え、宴会準備へと取り掛かる。 今回はいつも酔っ払って焚き火に足を突っ込んだり、突然横にぶっ倒れ近くにあるものを破壊してしまうけんちゃんのために、肘掛・背もたれ付きの立派な椅子を用意。本人も嬉しそうに座っていた。
シャバじゅう(=新潟魚沼地方では「そこらじゅう」という意味らしい)薪だらけなので準備は早い。 カンパーイ!見附川のイワナはプリッと身が締まり、色はきれいなピンク色、メチャクチャうまい。お刺身でいただいた。
けんちゃんの本日のパスタは、佐賀県名物「真かに漬け」というシオマネキ蟹をそのまますり潰し塩漬けにしたものを使った新作。 そして定番「寄居ホルモン」・・・。
いつものように現実でありながら現実ではないような心地よい時間を満喫し、そして夢の中へ。


 
河原が広い極上のテン場                        ツマミも揃って「カンパーイ!」


今日は疲れたね〜


二日目、魚止めを目指す。
早々に朝飯を済ませ出発。天気も最高、梅雨明けだ! 山越えの降り口まで歩き、その上から竿を出す。 昨日とは違い8寸クラスのイワナが毛鉤に食いついてくれる。楽しい! 最近の私はテンカラの楽しさにはまっているのだ。 流しているラインがピタッと止まり、オッとあわせるとギューッと竿が絞り込む。気持ちいい。
暫く釣りあがり、次のポイントへ移動しようとした時だ、私の後ろで隊長が言葉を発する。「でかい!」竿は大きくしなっているのにイワナの顔がなかなか出てこない。立ち位置を変えながら真剣な面持ちでやりとりをし、河原に引きずり出したイワナは見るからにデカイ。 けんちゃんがメジャーを取り出して測ってみると37センチの立派な顎を持つ雄のイワナだった。隊長も満面の笑みだ。
オバラメキ沢の滝壺では私が餌で探ってみるが7寸弱のかかいいイワナが釣れたのみに終わった。 そこから先も8寸から9寸のイワナがぼちぼち釣れ、楽しい釣りとなった。


 
2日目の朝 納豆で気合いを入れる                         今日はどうかなぁ・・・

   
「やったぜ!」                        「型もいいですよね〜。」

        
「フフン♪ まぁこんなもんかな。」             オバラメキのヌシ?を釣ったサンペイモドキ


もうすぐ高松沢出合という所で、ただでさえ冷たい水がさらに急激に冷たくなった。 ふと、その先の離れたところに目を向けると白い壁が・・・雪渓だ。 しかも、つい最近までスノーブリッジだったものが崩れ、その塊が川を埋め尽くしているではないか。 とりあえず近くまで行きその先に行けるか周囲を確認するが、かなり危険であるということで諦めることとする。
魚止めまで行けなかったのは残念ではあるが、また今度訪れたときの楽しみに取っておこう。 釣りは大満足だった。


  
飛び込んで流心を越える                     あまりの水の冷たさに思わず笑ってしまう

 
魚止めを目前にして雪渓が・・・                           終〜了〜!


早く帰って宴会の準備しなくちゃ


その日ももちろん大宴会。 定番メニューからメル秘新作メニューまで豊富な品数のツマミが宴を盛り上げる。 今回は久しぶりにイワナを焼き枯らすことにした。 何度も何度もひっくり返したり位置を変えたりと大変な作業だか、じっくり遠火にあて最高の照りが出たときには何ともいえぬ満足感を得られるのだ。
焚き火とイワナに注意を払いつつ、歌に話に盛り上がる。 そしてついに、けんちゃんはジミー・ペイジになっちゃいました。


 
イワナをさばいて・・・                                今日も呑むぞぉ〜!

 
本日のパスタはアマトリッチアーナ                          しょうが焼き

  
けんちゃんのために作った「王様の椅子」                      久しぶりの焼き枯らし


渓美隊恒例 「大アカペラ大会」

けんちゃんはジミー・ペイジになった


そしてオッサン2人はヒデキになった!

さぁ皆さんご一緒に〜!(合いの手ヨロシク)


ゥワァイ♪  (ワーイ)


エ〜ンム♪  (エーム)


スィィィ♪  (シィー)


エ〜ィッ♪  (エー)

あワ〜ン、あトゥ〜、あワ〜ン・トゥ・スリー・フォー♪・・・
おバカですんまそ〜ん!




帰りは太ももの筋肉痛がピークに。でも、あの山を越えなければ帰れないのだ。 「もう、へっけた(新潟県魚沼地方では「すねる」という意味らしい)」を繰り返しし言いながら沢を詰める。 行きは少々強引に沢に下りたが今回は最後まで詰めあがると下降点に目印があり、すぐに踏み跡がわかった。 しかし、その道はすごい急勾配を木につかまりながらずり落ちてゆくといった感じで少々怖いくらいだった。 水が出てきてポーン!と出たところは、行きに左右どちらに行くか悩んだ場所だった。 しかし振り返ってみると左の沢のほうが重い荷物を背負って登るには適していたように思うのでどっちも正解だったといえる。

何はともあれ久しぶりの見附川はいいところだった!

 
夢のような時は過ぎ、再び現実へ・・・                       月山名物 板ソバ大盛り完食!