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報告 高橋信博
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お盆休みは毎年のようにこの渓で遊ばせてもらっている。 魚影は濃いし、メジロアブはいないし、何より涼しく埼玉のクソ暑さから避難できるのが嬉しい。 ただ年々訪れる人が増えているようで、去年のお盆は人だらけだった。 どうせ今年も同じで釣りもあまり期待はできないだろう。 だったらまだ歩いていないコースでまったりと旅を楽しもう!ということで、野反湖から本流に降り立ち、小ゼン沢を詰めて登山道で野反湖へ帰る周遊コースを選んだ。
この時はまだ自分の中では「まったり」と「旅」がテーマだったのだが・・・。 |
野反湖から渋沢ダムまでのコースタイムは4時間。 初心者の敏子がいるが、登山道歩きなら特に問題ないだろう、と思ったのが最初の誤算だった。 登り主体の前半はまだ良かったのだが、最後のダムまで延々と続く下りに敏子が音を上げてしまった。 標高差600メートルを一気に下りるこの道は、「下りのスペシャリスト」を自称するこの私でも少々ウンザリするほどであった。 下りの苦手な敏子は、「ヒザが痛くてもう歩けない〜。」と泣きが入っている。 なんとかなだめすかしながら5時間かかって入渓点まで下りて来た。 敏子は半ばいじけている。 う〜ん困った・・・この辺りをベースに2日間を過ごす手もあるが、その場合帰りは今来た道を登り返さなくてはならない。 「登りのヘタリスト?」を自称する私とまにちゃんには、その選択は命取りだ。 まあ沢に入れば気分も変わるだろう、ということで遡行を開始することにした。
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登山道を歩く この時はまだ余裕 野反湖が見える 結構登ったもんだ
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千沢出合を過ぎ、カツラノセンの先で「通らず」となる。 昨年は左岸をへつって行ったが、今回は巻き道を選んだ。 その後ものんびり遡行した為、十六沢出合に着いたのが4時近くになっていた。 明日の行程を考えると黒沢近くまで行っておきたかったが仕方がない。
「お〜いまにちゃん、竿出しながら行こう!」 わずかな距離で5匹ほどキープして、高沢のテン場に荷を下ろした。 昨年と同じテン場で同じメンバー。 去年はあーだったこーだったと思い出話にも花が咲き、楽しい一夜を過ごした。
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おにぎり食べてもうひと頑張り! 釣りも少しはしなくちゃね
相変わらず魚影は濃い 高沢のテン場
高級ブタ味噌にかぶりつく 馬庭作 チンジャオロウスー
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2日目、大ゼンを登っていると3人組が下りて来た。 神戸から毎年訪れていると言う。 しばらく話をして別れたあとに気が付いた。 小峰さん達が毎年のように会う親子ってあの人達のことか〜。
やがて正面にナマリ岩が見えるともうすぐ黒沢出合だ。 「懐かしいっすね〜!」とまにちゃん。 彼の源流初体験はここだった。 当時、「車を降りたら2分で釣り場!」というフライマンだった彼を、佐藤と(無理やり?)ここまで連れて来たのだ。 その時のヘタレっぷりはいまだに語り草となっている。 「もう誘っても来ないんだろうな〜。」と思いきや、その後まにちゃんはテンカラに転向し、どんどん源流にのめり込み、ついには単独で渓泊まりするまでになってしまった。 今では心強い仲間である。
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大ゼン
「そうそう、そこに足置いて!」
正面に懐かしのナマリ岩が・・・
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正面にカギトリゼンが現れた。 まにちゃんに向って右手を挙げて、「釣りしていいよ。」とサインを送る。 大きな滝壺から一発で良型が飛び出した。 この先はナメが続き、イワスゴゼン、スリバチゼン、ヘリトリゼンと美しい滝が次々と現れる。 魚野川最大のビューポイントだ。 いつか舐め・・・もといナメ好きの貝好さんを連れて来たいものだ。
滝場を過ぎた辺りから釣り開始。 しかし数匹釣り上げたところで何やら雲行きが怪しくなってきた。 ピッチを上げて宿泊予定のテン場を目指す。 「ワオ!なんてこったい!」 先客がすでにテントを張っているではないか。 「じゃー小ゼンのテン場!」と少し戻って小ゼンに入ると、上流から焚き火の煙が・・・。「オーマイガッ!そんじゃーあそこだ!」と再び本流に戻っ先程のテントの沢屋さんとしばし歓談ののち次のテン場へ。 ようやく空きを確認してホッとしたのもつかの間、突然雷鳴が轟きバケツをひっくり返したような雨が降り出した。 カッパを取り出すまでもなく、あっという間に全身ズブ濡れだ。 タープを張り、乾いた服に着替えて一服。 川は濁りが入り、いくらか増水している。
「ああ、なんだか疲れた・・・。」と言いながら、宴会が始まるといつもの様に盛り上がってしまうのであった。
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一発でキタキタ〜!
カギトリゼンを登る
イワスゴゼン
スリバチゼン
ヘリトリゼン
そろそろ今日も釣りしなくちゃ ツバクロゼンの滝壺を釣る
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最終日は朝9時に出発。 今日も夕立が来るかもしれないので、昼には稜線に立ちたい。
初めて遡行する小ゼン沢は踏み跡も多く歩きやすい。が、敏子のヒザの調子が悪くペースが上がらない。 途中で古い卒塔婆を発見、3人で手を合わせてから通過。 奥の二股の左の沢を詰め、午後1時に五三郎小屋に到着した。 稜線に出てから大高山まではほとんど登りで、濡れたザックが肩に食い込む。 久しぶりに私はケ○ズレに、まにちゃんはタ○ズレになってしまった。
カモシカ平まで来ると、左手下方の高沢方面が怪しい雲に覆われ、遠く雷鳴が聞こえる。 こんな開けたところで雷に会ったらたまったもんじゃない。 疲れた体にムチ打って高沢山への急登をガンガン飛ばして行く。 しかし頂上間近でついに雷雲に追い付かれてしまった。 間一髪樹林帯に入り、大きな木の下で一服し、カッパを着る。 そこから1時間程は生きた心地がせず、「落ちませんように〜。」と祈りながら歩いた。
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最終日 小ゼン沢を詰める 五三郎小屋 ここからの歩きが長い
カモシカ平と高沢山
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長い下り道で、後方から敏子の呼ぶ声がする。 「何かあったか!?」 「あのね、ストックの先っちょがないの。」
見ると3段継ぎの1段目がない。 しっかり締め付けなかった為ズルズルの登山道に取られてしまったらしい。 つい先日買ったばかりの新品ストックである。
「ちょっと待ってろ、探してくるから。」と200メートルほど急坂を登り返してみたが見つからない。 諦めて戻ると敏子が待つ3メートルほど手前にズップリと突き刺さっていた。 やれやれ・・・。
「もうヒザが限界。」と言う敏子にピンソールを付けさせ、ダブルストックでゆっくり下りて来るように指示し、先行するまにちゃんを追いかける。 すると前方でまにちゃんが変な体勢でうずくまっている。
「やべ〜っ!やっちゃいました〜。」 顔が苦痛に歪んでいる。 泥に足を取られ転倒、かなりひどく捻ったらしい。 しばらく休んだあと、まにちゃんもピンソール を装着、木の棒でダブルストック。 これで3人のうち2人が要介護者となってしまった。 野反湖はまだまだ遠い・・・。 |
樹林帯を抜け、むき出しの稜線に出る頃には雷鳴も遠ざかりようやくひと安心。 少し歩いては2人を待ち、また少し歩いては「大丈夫か〜?」と声を掛ける。 ヘッデン下山を覚悟していたが、なんとか日没前に野反湖キャンプ場に到着。 盆休みで賑わう雨上がりのキャンプ場のど真ん中を、濡れネズミのような3人がトボトボと歩いて行く。 ファミリーキャンパー達の驚いたような視線が恥ずかしくもあり、ちょっぴり誇らしくもあった。
車に戻った時はすでに真っ暗。 テン場を出発して10時間、予定より3時間オーバーであった。
こうして、「まったり」のはずが「ぐったり」になってしまった我々の旅は終わった。
次回はオートキャンプもいいかな。
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やっと野反湖が見えたが、車止めはまだ遠い キャンプ場のど真ん中を行く
あ〜疲れた、次はオートキャンプがいいな |
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