報告 佐藤 恵亮




「釣りが目的じゃない山登りなんて絶対イヤ!」 「中高年ハイカーの『こんにちは』攻撃には耐えられない!」と今まで足を踏み入れようとしなかった自分が馬鹿でした。

「じゅるじゅる〜。」(鼻水)
「さぶいっすねぇ。」

「あぁ、風がなぁ。」
有料駐車場となっている名郷のバス停近くで体をぷるぷるさせて、私と隊長は登山ルートを案内板を見ながら確認。その頃、敏ちゃんは車酔いでグロッキーだった。
今回、低山ハイク初参加の私のことを考慮して隊長が選んでくれたのは奥武蔵と奥多摩の境に位置し、武甲山から大持山を経て南へ続く尾根上のピークである蕨山(1,044m)を名郷から名栗湖へと縦走するルートである。

「さあ、準備して出発するかぁ!」

隊長の掛け声に準備を始める。二人はしっかりとした軽登山靴をはき、ゴアテックスのスパッツをつけている。一方私はといえば服装は源流へ行くときの遡行服(あったか下着は身につけていたが)に5.10ラバーソールの渓流シューズ。もちろんソックス、スパッツは渓流用ネオプレーン製だ。 
「おはようございます。」早速、お出ましだ!しかし、ちょっぴり恥ずかしい私は足元に視線が行かぬよう元気に「おはようございます!」と笑顔で答えていた。
出発するとそこには雪と氷の世界が広がっていた。チュルン!チュルン!5.10ソールは沢では威力を発揮するが氷には全く効かないことが実証された。


  
積雪20〜30センチ ここは埼玉か?                    雪山も気持ちいいもんだ

雪の上を暫く歩き長い上り坂の途中、敏ちゃんが言った。「そろそろチェーン規制を発令しませんか?」「そうだな。そろそろつけるか。」 二人はチェーンアイゼンを取り出し装着を始める。私は・・・もちろんピンソールである。完全に沢仕様だ。
ようし、ここまできたら新企画、「沢用品は雪山でどこまで通用するか?」をホームページに載せようと思いついた。実験結果についてはこの原稿の最後にまとめたいと思う。


  
チェーンアイゼンが役に立った                  佐藤はピンソール 雪にもバッチリ

まあ、ともかくそれからの我々の足取りは軽やかだった。高度を上げるにつれ雪も深くなってゆくものの、空は青く晴れわたり朝心配をしていた風も全く無くなっていた。遠くには新宿だろうかビル群が小さく見え、広がる街が一望できる。最高の天気、見渡せる景色、そして程よい疲れがとにかく気持ち良い。

「おー、気持ちいいですね。」

「だろう!」

調子に乗って小休止のときにニットの帽子を脱いでしまったのは失敗だった。耳が冷たい。
蕨山山頂までは登りが続くが不思議とつらさは感じなかった。誰も触れていないふわふわの雪に「何か面白い跡をつけたいね。」などと盛り上がりながら楽しく登る。
駐車場で挨拶したすべてのグループを追い抜き蕨山山頂に到着。素晴らしい景色だ!近くの緑に覆われた山々と、遠くの雪に覆われた山のコントラストが実に美しかった。 ここで昼食をとりアツアツのコーヒーで身体を温める。

  
蕨山山頂                             やっぱ寒いぜ〜
  
コーヒーまだ〜?                                左奥が大持山、右が武川岳 今度行ってみよう

途中追い抜いた団体さん到着、そろそろ行くべ


後半は下りっぱなしだ。隊長はびゅんびゅん飛ばしていく。敏ちゃんはちょっとびびり気味。 「酔っ払いみたいだね。」と笑いつつも、滑る足元には細心の注意を払う。
藤棚山〜大ヨケの頭をあっという間に下ってきた。「そういえば山頂から先に出発したご婦人方、なかなか早いね。」結構いいペースで歩いてきたのに追いつかない。「さすがに慣れている人たちは違うね。」と素直にそう感じた。もちろんその直後に追い越させていただいたが・・・。
金毘羅神社跡から少し下ると名栗湖が眼下に広がり、そしてこのハイキングの終点に到着する。 「お疲れ様〜!」などと言っている間もなく「あれ?バスが走ってるぞ。」 「もしあれに乗れなかったら何分ぐらい待つんだろう?」 「オーイ!!乗せて〜!!」三人で両手を大きく振り、運転手さんにアピール。なんとか乗車。先に乗っていた一人の品の良い奥様が我々の必死な状況と乗れたことの安堵の様子をすべて見ていたようで、吹き出さんばかりに大笑いしている。そして、お菓子をくれた。


プチ雪山プチ縦走は楽しかった。オフシーズンの楽しみを見つけることができた。

みんなも行こう低山ハイク!!

  
藤棚山                                     久々のツーショット

  
眼下に名栗湖を見下ろす                      日頃の行いが良いのか、下山と同時にバスに乗れた


<実験結果>

遡行服(速乾素材、タイツ)
防寒対策さえしていれば動きも良いし、汗の乾きも良いので問題なし。

5.10ソール渓流シューズ
氷には全く効かない。メチャクチャ滑る。靴の中も濡れる。

ネオプレーン製ソックス
指先が冷たくなることもなく濡れても冷たくないので向いている。

ネオプレーン製スパッツ
歩くときに疲れるため使用しなかった。

ピンソール
氷、踏み固められた雪には効果絶大。サラサラ、シャーベット状の雪にはあまり効かない。もちろん土にはよく効く。


何の役にも立たない実験結果でした。 雪山に行く人は万全の装備で行きましょう!!