報告 佐藤 恵亮




2009年、渓美隊の山行は雪山ハイキング&新年会で幕を開けることになった。 今回は昨年の秋にけんちゃんが単独で行ったコースの一部で、樺小屋に一泊し新年会をする予定だ。
出発を数日後に控え、天気予報は下り坂。というか雪予報。雪山にいくのだから雪がふっていてもいいかとも思ったが路面が凍結していたら大変!私の車がいまだスタッドレスに交換していなかったことを悔やみ、あわてて隊長に電話すると・・・
隊長「俺の車でいいよ。 でも・・・運転は頼む!正月に腰痛めちゃってさあ。荷物も背負えるかわかんないんだよ。」

佐藤「大丈夫です。あばら骨にひびが入ってても大丈夫だったじゃないですか!」

隊長「けんちゃんにも同じ事言われたよ!ったく他人事だと思って、ブツブツ・・・。」
かくして当日を迎えた。 まだ夜が明きらないうちに川口の我が家を出発。川越で隊長、けんちゃんと合流し秩父を目指す。昨日とうって変わって最高にいい天気だ。
花園インターで高速を降りて暫くは周囲に雪は見当たらなかったので「なーんだ、こっちもたいして降らなかったんだなあ」なんて安心していたが奥へ奥へと車を走らせていくと共に路肩に積もる雪が目立ち始め、路面の凍結に慎重にならざるをえない状況になってきた。 目的の車止めである川又に到着すると3〜4センチの積雪。 やはり隊長の車でよかった。
トイレを済ませて準備に取り掛かる・・・しかし!
「先輩、スパッツってどうやって着ければいいんですか?」
「スキーウエアのズボン穿いて、ダウンのベスト着ていったほうがいいですかねぇ?」
「そういえばアイゼン買ってきた?」
雪山初心者3人では少々不安が・・・。
「雪山では、汗をかかないようにしたほうがいいんだぞ!濡れた服で体を冷やすだろ。」隊長のその言葉でなるべく最低限の服装にして出発する。しかし、登山口まで20分間の車道歩きを終える頃には「やばい!暑い!もう汗がでてきっちゃった。」
結構薄着になったつもりであったが、これは絶対に必要だと思って購入したネックウォーマーが裏目にでた。
身支度を整え、登山道の杉林を少しずつ高度を上げながら歩いていく。だんだん地面も雪で覆われ、雪山の様相となってくる。ふと見上げると木に積もったパウダースノーが風に吹かれて飛び、キラキラと日光に反射する。誰からともなくこのフレーズが・・・。

♪「こな〜ゆき〜、ねぇ(歌詞をよく知らないのでこの部分を繰り返す)


いざ出発


きれいだね〜


雁坂峠登山口に到着


久しぶりのザックは重い


この時はまだほとんど寒さが気にならなかった。隊長の腰も横に捻らなければ痛みはないというから安心。前日の雪でトレースは全くないが、もともとしっかりした登山道のため迷う心配もなさそうだ。周囲の景色をみながらゆっくりゆっくり足をすすめていき、なんだか勾配がなくなってきたなあと思ったらブォ〜〜!ブォ〜〜!」突然ものすごい風と横殴りの雪。 まさに吹雪の中にいるような状態になってしまった。「あっ、もうすぐ雁道場だ。」けんちゃんが教えてくれる。一旦、風のないところまで戻り地図チェック。そしてここから始まる急登に備え軽くパンをかじる。
しかし、体がポカポカしているのはほんの一瞬でちょっと休むと急激に冷えてしまう。早々にザックを背負い雁道場を通り過ぎる。
「ツンデレ峠はまだですかー?」
「ツンツンしたりデレデレしたりするおねーさんはいないから!」
「ツンデレ峠じゃなくてツンダシ(突出)峠ですから!」
こんなふざけた会話をしたり、けんちゃんがマイタケを発見したときの現場検証をしたりしながらだったので急登はそれほできついとは感じなかったが、実際にはここで高度を上げている。 噂の「はいつくばっても・・・」看板を確認し、2時を過ぎた頃に突出峠に到着。
そこからは比較的平らな道をテクテク歩き3時過ぎに樺小屋到着。 今回もけんちゃんの「あそこのカーブを曲がったとこが怪しいな〜。」という発言に2回ほど騙されたがそれほど苦ではなかった。


入川赤沢谷方面を望む

 
急登が終わると突出(つんだし)峠に到着                この辺りで積雪20センチ  新雪歩きは疲れるな〜


この先小屋までは緩やかな登りだ


樺小屋へ着いたど〜!


けんちゃんのレポートにもあった通り、柳小屋と同じ造りのこの小屋にはなんだか親しみがもてた。小屋の中にあった温度計を見るとマイナス7℃。夜にはどのくらいまで気温は下がるのだろう?何をおいてもストーブをつけて暖まりたい。早速薪集めを開始する。雪の中での薪集めは苦労するかと心配していたが予想外に簡単に集まった。乾燥した薪はすぐに燃え、3人はストーブの周りに座り熱々のコーヒーで体を温めた。
着替えをし、寝床を整えていたその時だ。「ガラガラ、こんにちは。」1人の女性が入ってきた。単独で我々と同じルートで来たとのこと。もう外はすっかり暗くなっていた。
彼女の名前はミヤモトさん。単独で山に入ることが多いそうだ。折角だから一緒にどうですか?と若干無理矢理だが我々の宴会に参加していただき楽しい時間を過ごすことができた。
今回は(いつも?)宴会が目的である。いつものようにホルモンやら激辛カレーやら・・・。
けんちゃんは薪ストーブがあるのをいいことに『ナン』を作り始めたではないか! 私はというと、寒いときの味方『おでん』。ちょっと重かったが熱々のおでんは体を温めてくれました。
「私、うどん持ってきてるんです。このスープに入れてもいいですか?」とミヤモトさんが提案。全員一致で「いいねー!」
うどんとわかめをおでんの鍋の中に投入。そして、この寒い雪山で最高にうまい食べ物が完成した。その名も”うでん”。是非お試しあれ。
薪ストーブで温められたホットワインが体を温め、いい気分に。 いつも以上に飲みすぎてしまった。


小屋の中の様子  ストーブがありがたい

 
とりあえずホルモンで乾杯!                   けんちゃんがナンを作る

 
サトウのおでん                                これが「うでん」だ!


冬山でも渓美隊の主食は『肉』なのです


朝、喉がカラカラ、脱水状態で目を覚ます。 もうすでにミヤモトさんは雁坂峠に向け出発していた。ストーブの薪を足し、ビリー缶に入れた雪を溶かす。山盛りにした雪も解けてしまえばたいした量の水にならない。繰り返し溶かし、できた水を隊長の持参したキッチンペーパーで濾過し調理に使う。そんな雪山での知恵は、はじめての経験だったのですごく新鮮だった。
のんびり朝食を済ませ、掃除をし、記念撮影をしていたらなんと小屋出発が11:30近くになってしまった。
6本爪の軽アイゼンを初めて装着し、かなりウキウキで記念撮影。帰りは快適だ。何しろずうーーーーっと下り。よくまあ登ったものだと感心するくらいの下り。そしてアイゼンのおかげで滑ることもない。
しかし、アイゼンの高さを考えないで障害物をまたごうとすると引っかかってつまづくので、それだけは気をつけなければならなかった。
雁道場まで一気に下り、そこからは行きとは別の黒文字橋に出るルートをとることにした。こちらは、距離的には短いが勾配がきつい。杉の植林の中のつづらおりになった道をひたすら降りていくと、突然舗装された道に出る。 到着か?と喜ぶが、その舗装道も暫くつづらおりに・・・。そして黒文字端に到着してからも140号を車止めまで歩かなければならない。やっぱり舗装道は苦手だ。それでも車止めには3時くらいに到着。 やっぱり下りはいいよねー。


翌朝もドピーカン


朝食は10時すぎ  相変わらず遅い


樺小屋前で記念撮影


せっかく買ったので、帰りはアイゼンを装着


帰りはずっと下り  楽しかった〜♪


私にとってはじめての雪山一泊であったが、とてもよい経験になった。沢での遊びとは別の山の楽しみ方もたくさん経験しなきゃ。

今年もたくさん遊ぶぞ!!