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報告 佐藤 恵亮
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11月半ば、千葉軍団の庄司君からメールが届く。
「Yスポーツのセールにてスカルパ20%オフでゲット!」
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我々川越渓美隊が最近雪山にハマっていることを知って、千葉軍団から出向してこようとする人間があとをたたない。そしてこの男も例外ではない。現に10月の「男体山・プチカモシカ山行」にもしっかりと参加。それ以来、「雪山行きたいなぁ。」「靴はどんなのがいいだろう。」「アイゼンも必要だよね。」と度々電話やメールでやり取りをし、ついに購入に踏み切った次第である。
そして11月最終週末、みんなが顔をあわせる機会があり、そこで今回の山行が決まった。もちろんリーダーは石川さん。年越しにして初日の出を見ちゃおうか?との案も出たが、現実に立ちはだかる諸々のしがらみを鑑み、大晦日には下山する計画となった。 |
今回目指す女峰山(2,483m)は、表日光連山の中でひときわ高く、また鋭い岩峰を持つ山である。霧降高原スキー場から小丸山、赤薙山を経て女峰山山頂へ。時間的に余裕があればヒヤヒヤのやせ尾根を帝釈山まで歩き、富士見峠から馬立、裏見滝に降りてくるというコースを予定している。途中、焼石金剛と富士見峠付近が泊まり場だ。 |
例年であれば、年内の勤務の翌日から年末年始のあわただしい日々が続いているのだろうが、今年は事前にお風呂の掃除、ガスレンジ周りの掃除、そして妻への十分なアピールを済ませた。そのため部屋中に広がった山道具をじっくり吟味し雪山への妄想を膨らませながらパッキングをすることができた。 |
12月29日(火)高橋隊長と2人、鹿沼の石川邸を目指す。高速道路からは左手に美しいフォルムの浅間山、そして正面にはこれから向かう雪を被った日光の山々がハッキリと見え除々に近づいてくる。帰省ラッシュを考慮しかなり早めの出発をしたが、心配をよそにかなり余裕の到着となった。
「しなそば麺坊で昼飯でも食おっか!?」
HP”岩と魚の眼の会”管理人の中尾さんが経営されているお店で、石川邸からはほど近い場所にある。店内に入りお勧めメニューの中から「しなそば・きのこカレーセット」をお願いする。
たまたまカウンターの隣にはHP”山渓放浪記”の管理人である牧野さんがいらっしゃり、初対面の挨拶を交わす。山やきのこの話で盛り上がりながらボリューム満天のセットをおいしくいただき、満腹でお店をあとにした。 |
すでに石川邸には庄司君が到着しており、こちらでも偶然ではあるがカレーを頬張っていた。食事を済ませると、石川さんが手際よく準備を始める。
「アイゼンは?」
「軽アイゼンならありまーす!」
「よし、ピッケルは?」
「ないでーす。」
「じゃあ4本ね。」
今回は入門ということで初めから石川さんに頼りっぱなしの状態。それにしても、何本のピッケルを持っているんだ、この方は!?
石川家の奥様と息子(たけぽん)に見送られ、出発となった。 |
2月の赤薙山の時同様、霧降高原スキー場の駐車場で準備を整える。庄司君は買ったばかりのスカルパの靴を履きテンションが上がっている様子だ。14:30「さあ、出発しよう!」
閉鎖されている霧降高原スキー場の斜面を一歩一歩ゆっくりと歩いていく。頭上には青空、眼下には日光の町が見えており美しい。ところが歩き始めて20分位したころからだろうか、庄司君が遅れ始め、やや息も荒くなっている。「汗かきそうだったら、脱いじゃったほうがいいよ。雪山では汗をかかないように衣類を調整するのがポイントなんだって。」「あと、歩く時はつま先で少し雪を蹴りながら歩くと楽だよ。」以前教わったことを今度は私が伝える。ゆっくりと休憩を入れながら歩き、何とか小丸山に到着。「暑っつー!!」やはり庄司君は初めての雪山ということで気合を入れて着過ぎていたようだ。再度調整をして出発。今日の泊まり場所の焼石金剛まではそう遠くはないものの、すでに時刻は16:00を過ぎている。夕暮れに追い立てられるような形になってしまったが、冷静にテントを張る最高のスペースを確保。テントの設営をすばやく済ませ、夜の部に入る。
「カンパーイ!」今晩のメインディシュは、な、なんと!テント内にもかかわらず坂戸の名店『ホルモン屋』特製のホルモン焼だ!モクモクの煙でテント内はホワイトアウト状態。いくら厳しい状況にも耐えうるゴアテックス製エスパースといえどもホルモンの煙では目詰まりしてしまうのではないかと本気で心配するくらいであった。前夜祭からやや飛ばし過ぎてしまった。
翌朝、テント内に武装した男が一人じっと身を潜めていた。目は逝っている。そう、雪山初体験の庄司君だ。「寒くって眠れなかったよ。」「みんなスヤスヤ寝ててどうしようかと思ったよ。」シュラフは私が使っているものより暖かいものを使っていたが、ゴアテックスの上着を着たまま寝たためシュラフの暖かさを遮ってしまったのではないか?との結論になった。また、186cmの体はテントで寝るにはデカ過ぎるというのも原因のひとつであろう。(どうしようもないが・・・。)
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午後2時40分出発 今夜は焼石金剛に泊まる予定
スキー場のゲレンデを登る
正面が赤薙山 日没寸前にようやくテントを設営した
ホルモン屋さんからの差し入れ ごちそうさまでした!
楽しいテント宴会
これがあるから山はやめられないのだ
「先に女峰山で待ってるぜぃ!」 山頂に向かって走り出すヨッパライ
朝食はドライカレー 旨いんですよ、これが!
武装テ○リスト風の庄司君 寒さで一睡もできなかったらしい
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さあ、今日がメイン。女峰山のピーク目指してがんばるぞ!とそれぞれアイゼンを装着。庄司君がおもむろに12本爪のアイゼンを取り出した。おぉ〜!かっちょいいなー。意気揚々に歩き始めるが、しかし、どうも庄司君の元気がなく、前の2人との距離が除々に離れていく。時々、ズボッと雪に深く足が埋まってしまった時にはなかなか這い出すこともできなくなっている。
「コラー、へたれ!そんなんじゃヒマラヤには行けないぞ!」・・・私
「ああ、へたれで結構だよ。」・・・庄司
「弱虫!お前は弱虫だー!」・・・私
「おうおう、何とでも言え。」・・・庄司
「アイゼン、7掛け、いや半額で買うぞ!」・・・高橋、私
「日和田山で使うからいいよ。」・・・庄司
完全に心が折れてしまっている。 |
前回来た赤薙山の山頂(2,010m)を越え、しばらく進んだところでアップダウンが始まる。一つ目はしんどそうではあったが何とか越えることができた。しかし、その先の登り斜面を見ながら庄司君がため息交じりに小さくつぶやいた。「無理だよ・・・。」時計はちょうど12:00。石川リーダーが苦渋の決断を下す。
「俺と庄司はここから引き返す。君たち2人は先にゆけ!」←演出入っています。
こうしてふた手に分かれることとなった。
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女峰山に向けて元気に出発!のはずが・・・
体調が悪そうな庄司君 珍しくヘタレている
とりあえず赤薙山に到着したのだが・・・
庄司君無念のギブアップ(>_<)
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私と高橋隊長は、荷物を安全な場所に置き最低限の装備で出発した。途中、下ってくる女子2人組や学生風のパーティーとすれ違う。雪のついた狭い小尾根や、岩を巻く箇所など細かいながらも雪山登山を満喫しながら歩き、1時間弱で奥社跡に到着。少し先まで歩いたところから女峰山の方角を見る。長く平らな一里ヶ曽根、少し飛び出た独標、そして女峰・・・。地図を見比べながら、次回リベンジすることを心に決め下山とした。
下りはあっという間だ。もうすぐ赤薙の山頂というところまで来たとき、こちらを見て手を振る石川さんの姿が目に入る。庄司君に何かあったのかと一瞬心配したが、帰ってくる時間を予測して迎えに来てくれたとのこと。今回は残念ながら敗退となったが、いつかもう一度チャレンジしたいと石川さんに伝えた。
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ヤセ尾根からの景色は最高〜♪
雪の付いた岩場を乗っ越す
奥社跡にて 次回のリベンジを誓う
心配していた天気も上々 すばらしい景色を堪能した
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赤薙山山頂の樹林帯の中に、テントは張ってあった。庄司君は中で一人休んでいる。
さて、今夜は大宴会だ。「庄司君起きろー!」
敗退したことはもう終わった話。さっさと宴会始めよう!時間も早いので、と庄司君が出してくれたものは、遠く北海道にいる彼女から送られてきたという鮭トバ。その名も「鮭トバ一郎」だそうだ。やわらかくていい味だ。そして石川さんが何やら出してきたと思ったら燻製のイカ、かまぼこ、伊達巻ってこれビリー缶のふたの上でおせち料理になってるじゃん!!だんだんテンションが上がってくる。正月にはこんなのもあったらいいんじゃない?生ズワイガニのしゃぶしゃぶ!そんでもって今宵のメインは胡麻坦々鍋ですよー。
雪山に出会い、ハマっている熱い気持ちが石川さんの体験談などを聞くことによりどんどん強くなっていく。今後の雪山での活動について夢が広がるのを抑えきれない。
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赤薙山山頂付近に張ったテント さあ宴会の始まりじゃぁ!
完敗、じゃなかった乾杯〜!
かまぼこに伊達巻 ひと足早いおせちです♪
なんと山で「カニしゃぶ」 カチンカチンに凍ってますが
本日の鍋物は「胡麻坦々鍋」
酔うと電話は稜線宴会の悪いクセ 今宵の被害者は誰?
地図を見ながら次回の作戦会議
撤収準備 雪が降り出し風も強くなってきた
「耐風姿勢」の練習
「滑落停止」 ちょっとヤラセ臭いですが・・・
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帰路、焼石金剛から小丸山間では横殴りの雪と強風を軽く体験することができた。また、スキー場まで降りてからは滑落停止の訓練を少々実施。あとは、お尻とピッケルを使いズルズルと下山。今市の町では各家庭の玄関に正月飾りが準備され、大晦日の慌しい空気が感じられた。「そうかあ、明日から新年だ。」
平成22年も安全に、楽しく活動をしよう!と強く誓った瞬間だった。
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今回の登頂断念に係る後日検証(高橋隊長談) |
「今回は女峰山登頂ならず残念でしたが、庄司君の体調はかなり悪かったようです。写真を整理してみてわかったことですが、行きと帰り、明らかに庄司君の体に変調が見られました。雪山では無理は禁物であり、今回の撤退は正しい判断でありました。」
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入山時にはこんなに大きかった庄司君が・・・(写真中央)
下山時にはこんなに小さくなってました(爆) 写真左端
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