報告 高橋信博



(前編のつづき)
先発隊がテン場に戻ってきた時、後発隊の3人がなんとなくヤサグレた雰囲気に見えたのはなぜか?
・・・それはたぶん疲れていたのです。・・・
まずは出発数日前の会話から・・・

貝「食材は何を持っていけばいいですかね?何しろ2泊は初めてなもんで。」
高「乾き物でいいですよ!肉はオレが豚バラとホルモン持ってくし、どうせ先発隊も食いきれないほど持ってくるから。とにかく軽量化してきて下さいネ!」
貝「いや〜それじゃ申し訳ないし・・・梨なんかどうですか?」
高「そぉんな水分の多い物、ぜぇっっったいに持ってこないで下さい!今回は山越えなんだから!」
貝「酒は焼酎1升で足りますかね?人数多いし。」
高「人数関係ないです!みんな持ってくるんだから!自分が2泊で呑み切れる量プラスアルファで考えて下さい!」
貝「うう〜ん、でも・・・わかりました!何か考えてみます!」
貝好さんの曖昧な返答に一抹の不安を抱えながらも、いよいよ後発隊出発の日を迎える。先発隊(菊地・佐藤・ゲン)から1日遅れての入山である。
いつもの様に一ノ俣沢を沢通しで行く予定なので、今回は2人の介護、いや確保のザイルを用意した。すると貝好さんが、「やっぱり梨持ってきちゃいました!」と、屈託のない笑顔で言う。「バテても知らないからね〜!」と、この場は和やかに笑いながら出発。
杉林を越え一ノ俣沢に入り遡ること30分、早くも貝好さんが遅れ出す。やがて・・・
「足が痛くて・・・少し休んでいいですか?」
「だから言ったじゃないっすか〜!もうオレが背負いますから、梨出して下さい!」
ザックから取り出した袋にはメロンの様に巨大な梨が2個、トマト3個、レトルト食品・・・
「もう水分ばっかじゃん!あれほど言っておいたのにぃ。」
「だって、みんな喜んでくれると思って・・・」
貝好さんはまたまた屈託の無い様子でへへーと笑うのであった。
当初の計画では今出をテン場とし割岩沢ジッピを見に行く予定であったが、台風の影響による雨が心配されたため、目的地を今早出沢ガンガラシバナとした。アプローチもグッと楽になったし、先発隊がテン場も確保しているし、安全第一でゆっくり行けばよい。
途中、2箇所の滝でザイルを出す。2人をなだめすかしながら、かつてないスローペースで今早出沢に降り立ったのがお昼過ぎ。なんと6時間を超える山越えであった。(やれやれ)
「疲れたのでちょっと休んでいいですか?」「ダメ!テン場あと5分だから、歩く歩く!」
先発隊は今頃下流の広倉沢辺りで爆釣かな。仕事の都合で後追いとなってしまったが、おかげでなかなか休みを取れない2人を連れてくることができたのだからOKとしよう。
特に貝好さんにとって早出は憧れの地で、自分の足で来ることは生涯ないと思っていたそうだ。こうなったらなんとしてもガンガラシバナを見せてあげたい。


一ノ俣乗越  所要時間6時間15分(ハア〜)


グロッキーな2人のために・・・


介護用ザイルを引く


今早出沢の河原に到着 「疲れた〜」のポーズ

テン場にザックを下ろし試し釣りに出かける。7月の豪雨の影響が心配だったが、以外にも沢は超渇水だった。ほとんど止水状態で藻が発生し、源流とは思えない渓相になっている。ヒキガエルが泳ぐ姿がやたらと目立つ。釣れるイワナも5、6寸がボチボチ。大イワナほど大規模な出水に弱いというが、もしかしたら大雨で流されてしまったのだろうか。
小一時間で飽きて納竿、テン場に戻り先発隊を待つことにする。
着替えを済ませ荷物を整理していると、貝好さんが何やらバツが悪そうにザックの中をゴソゴソまさぐっている。そっと取り出したその中身は・・・な、なんと丸々太ったイカ飯(しかも4杯!)、タマナギ、ジャガイモ、キュウリなどの重たい野菜(各2、3個)、ナス・ピーマンはスーパーのパックごと。ま、まだそんなに隠し持ってたのか!
そんなに誰が食うの?ていうか何作るの?
ちなみに酒は焼酎の前割り(最初から水割りになってるやつ)。水なんか売るほどあるっちゅうに〜!つーかどうせならビール持ってくればいいのに〜!
「いいですか!荷物ってぇのは歩ける人が背負うもんです!時間が掛かればそれだけリスクも増えるし、重荷が原因で事故でも起こったら・・・」と半分マジのお説教タイム。貝好さんもちょっとは反省した模様。
やがて先発隊の3人がグダグダになって帰還。容ヶ谷、清水沢、広倉沢を釣り、割岩沢も下流部を探ってきたそうだ。みんなタフですなぁ。
再会を喜びつつ乾杯!先発隊の釣りの話、今日の山越えの話、貝好さんのザックの中身ネタで盛り上がる。
「佐藤、聞いてくれよう!貝好さんがさぁ・・・」「年取ると人の言うこと聞かなくなるんですよね〜!」ってな具合でネタの尽きない宴会となった。
ラジオの天気予報を聴くと予報は好転し、明日は晴れるらしい。
「明日はガンガラやめてみんなでジッピ見に行こうぜ〜!」と言ってみたが、全員一致で却下された。


先発隊と合流し、早速カンパイ!


たまにはアボカドなど


ゲンちゃんのオシャレ系料理


例の梨


例のトマト


今宵も打楽器系で盛り上がる


今宵もノリノリのけんちゃん

翌朝全員でガンガラシバナを目指す。
途中右岸の砂地にまだ新しいクマの足跡を発見、かなり上流まで続いていた。
昨日と同じで魚影はほとんど確認できず、イワナの出も型もイマイチ。
横滝手前の瀞で敏子が「ウルトラスーパースペシャルデラックス・ビギナーズラック!」なんと今釣行最大の36cmを釣り上げた。釣り師達は黙って竿を仕舞い遡行者となるのであった。
やがて目の前にドドーンとガンガラシバナが現れた!
過去2回増水に泣いた佐藤は3度目の正直でようやくたどり着いた。憧れの地に立った貝好さんは、「もう足が限界です。」と言いながらも感動している様子。思い思いに写真を撮ったあと、テン場に戻りいつもの大宴会で締めくくった。


全員でガンガラシバナを目指す


クマさんもガンガラ見に行くのかな


ルアーで攻めるゲンちゃん


貝好さん 記念すべき早出のイワナを釣る


これがあるから釣りはわからない


源頭は近いぞ!


ガンガラシバナ  ドーン!


奥に進んでみる


ガンガラシバナ直下は更に大迫力!


横滝水泳大会


けんちゃんが跳ぶ


最終宴会 今日も呑むぞ〜!


例の・・・


今日も豪華なツマミが並ぶ


ゲンちゃん火力調整中


「逆ウルトラマン滝」 名前の由来はマニキです(笑)

高「来年はジッピ行きましょうかね。でも梨もイカ飯も禁止だからね!」
貝「そうですね。でも・・・また持っていっちゃうかも(ニヤリ)。」
不敵に笑う貝好さんを見て、来年からは車止めで持ち物検査をしよう!と固く心に誓う私であった。