報告 佐藤 恵亮



ついに登頂!八ヶ岳主峰赤岳。
石川さんの指導のもと雪山に足を踏み入れたのが2009年。以来、渓美隊メンバーのほとんどが雪山登山にはまった。そんな我々の最初の目標が雪山登山の登竜門、この赤岳登頂だったのだ。
メンバーは当初高橋隊長、菊地副隊長(けんちゃん)、私の3名の予定だったが、急遽けんちゃんが仕事の都合で不参加となり2名となった。「けんちゃんの分まで思いっきり楽しんでくるからね(笑)」
美濃戸口〜美濃戸間は路面状況が悪いとの情報から、一応チェーンは持ってきてはいたが、あっさり美濃戸口に駐車。1時間のアルバイトのため、ヘッドランプでの出発となる。路面は深い氷の轍ができている。「歩いて正解!」とうなずく。
今回は美濃戸→北沢コースで赤岳鉱泉→行者小屋⇒文三郎道→赤岳山頂→地蔵尾根→行者小屋⇒赤岳鉱泉(テント泊)→美濃戸の予定。
何度か北沢にかかる橋を渡っていると目の前に大同心、小同心が逆光の中に浮かび上がる。「うぉー、かっこいい!」「けんちゃんにメールしなきゃ。」「大同心、ビーン!!」
横岳から硫黄岳にいたるゴツゴツとした岩峰を眺めながら進むと、まもなく赤岳鉱泉名物アイスキャンディー(甘〜いあれではないですよ)がお出迎え。なんとも偶然だったのだが、この週末2日間はアイスキャンディーフェスティバルというイベントの開催予定となっており、到着時は準備の真っ最中。
なにはともあれ、今宵の宿の設営だ。アイスキャンディーがよく見える高台にテントを張り、今後の計画を寝る。
「天気は上々、見晴らしも良い。よし!フェスティバルをenjoyしよう!」
登頂を翌日早朝と第1の計画変更、のんびり昼寝。目を覚ますと、テント内は温室状態。外からは若い女子の黄色い声。軽く偵察にいくと、スピードアイスクライミング大会で盛り上がっている。
「よし!俺たちもフェスティバルだ!」
マニワ土木がいない今日は、わたしが宴会場作りを頑張るしかない。二人のベンチとテーブルを雪で作成。なかなかうまくできた。
「カンパーイ!プシュッッ」
2人きりの大宴会が始まった。
「どんどん降ろせー!!どんどん降ろせー!!」
次のイベントは長野県警山岳救助隊によるデモンストレーション。
アルコールがいい具合に効きはじめ、フェスティバル満喫。
アイスキャンディーのてっぺんから、でかくて頑丈な特別なソリに乗せられた遭難者役を慎重に、しかし手際よく大きな掛け声とともに降ろしていく。向かっているのは垂直な氷の壁。「うわっ、怖ー!」
思わぬところで出会ったリアル「岳」に感動した。
夜にはライトアップされたアイスキャンディーを見ながら、「この感動をみんなに伝えよう!」とメールやら電話を試みるが電波状況が悪くあきらめる。アツアツの鍋で酒はどんどん進み、テンションMAX! 7時間以上におよぶ大宴会に幕をおろす。


林道凍結のため美濃戸口からプラス1時間のアルバイト


「大同心、ビーン!!」


ロケーションのよい場所にテントを張って、とりあえず昼寝・・・zzz


目が覚めると、こんな賑やかになってました


我々はもちろん乾杯!


暖かいので雪のイスで外宴会です


ほろ酔いで長野県警山岳救助隊のデモンストレーションを見に行く


「ゆっくり降ろせー!ゆっくり降ろせー!」 ← 救助隊の掛け声


「どんどん降ろせー!どんどん降ろせー!」


続いて特注ハーネスで背負って降ろす方法


めちゃカッコよかった!


終わったらテントに戻ってまた呑み始める


モルホン


寒くなってきたのでテントに入って「豚ネギしゃぶ」


アイスキャンディーのライトアップ  すでにベロベロで危ないのでテン場からパチリ!

翌朝4時、正しい登山者は起床する。今回の我々は、優等生でした。
昨夜の豚ネギしゃぶの出し汁で作ったうどんを食べ、夜明けの雪道を行者小屋に向けヘッドランプで歩き出す。ついに念願の赤岳に向かうのだ。
アドレナリン出まくりで、赤岳鉱泉から行者小屋まではあっという間に到着。阿弥陀北陵への分岐、中岳沢分岐を過ぎ文三郎道に入ると徐々に勾配が増していく。「どんどん登れー、どんどん登れー!」救助隊の掛け声をいただく。
途中すれ違った男女ペアは、センターリッジを予定していたが天候が悪くなりそうなので戻ることにしたとのこと。確かに雲行きが怪しい。「状況を見ながら行こう。」
少し進むと、センターリッジの取り付き分岐に到着する。登っているのは2パーティー。上を登っているペアはお互いの声が聞こえないようで苦労していた。我々には二人の声がよく聞こえていたのだが・・・。
長いトラバースでは落石にヒヤッとさせられることはあったが、問題なく通過。中岳との分岐でしばし写真撮影。そこから先は、岩稜帯で雪は少ない。アイゼンのひっかけに気を付けながら進む。風はあるものの、気になるほどではない。鎖場を過ぎ、大岩がゴロゴロし始めるともうすぐ山頂といった雰囲気。
もうちょっとだ!「そうだ、先輩、先に行ってください!昨日49歳になった記念に最初に赤岳山頂を踏んでもらわなければ!」

「やったー! 赤岳山頂!」

360度の展望こそなかったものの、なんだがジュワァーといい気分になった。
二人で感動の記念写真を撮ってもらい、下山を開始。天候が良くないため、当初の予定を変更して帰路も文三郎道を決めた。
だんだん雲が厚くなり、さっき我々が立っていた頂上付近は見えなくなってしまった。いいタイミングで、いい判断だった。気温が高く、登りの時より雪がグズグズになって歩きにくい。「まぁ、よく登ったなぁ。」と思いながら、気楽に我が家を目指す。
二日目のフェスティバルが開催されている赤岳鉱泉に帰ってきたのが10時半。
「えっ、早っ!」やはりすごい人の数。
テントの撤収をしていると、なんだか外国語でにぎやかなグループが小型のTVカメラのようなものを構えながら去っていった。すべて片付き、帰りの歩きのためにアイゼンを着けていると、先ほどの物と同じようなカメラがこちらを向いているのがわかった。「また外国の人たちかな。」とはじめは気にしていなかったのだが、「エベレストが・・・」とカメラの前で小柄な女の子と、細身の男性が日本語で話しているのがわかる。
有名な女性クライマーなのかなぁとちょっと期待してジロジロ見ていると、突然「じゃあ、行ってみましょう。」といって、急にこちらに振り返り歩き出した。その瞬間「イモト、あっ!イモトだ!」
話題満載の最高の山行でした。
俺たち、テレビに映っちゃうのかどうか?今のささやかな楽しみです。


翌朝は早起きして行者小屋経由で赤岳を目指す


傾斜の強い文三郎道の登り  上部は階段が一部出ていた


さすが赤岳は登り応えがありますな〜


阿弥陀岳をバックに赤岳山頂を見上げる


赤岳上部の岩場  もうすぐ山頂だ


何度も機会を逸した赤岳だったが、ついにゲット!