報告 高橋 信博



渓美隊の荷物は多過ぎる、と人からよくいわれる。基本的に食料はとくに分担せず個人任せである。 各自がマル秘食材を仕込み、テン場で「こんなん持ってきちゃった〜!」とサプライズを狙っている。おかげで3泊目でもオカズには困らない。いや、むしろ食べきれない程残っていることが多い。
最終日の朝食には余った食材が大量に並ぶ。酒も同じく、ビール・焼酎・ワイン・ウイスキー…ハイボールが流行れば炭酸水まで持ってくる。マッコリが流行れば3本、4本と並ぶ。実に隊員の9割が太って帰るという・・・。
各々のザックには使いもしないフライパン・ビリーカン etc・・・。
それでも背負えるうちは背負えばいいさ!と思っていた。
軽量化を思いついたのは今年のゴールデンウィークの経験からだった。北アルプスのとある縦走コースを計画したのだが、初日のテン場までのコースタイムを大幅にオーバーしてしまったのだ。先に到着してテン場を整地しながら佐藤に言った。「縦走はあきらめよう、このペースじゃ明日は遭難だよ。」「そうですね・・・。」佐藤も同意した。
考えてみれば渓美隊も結成13年目、平均年齢は40代半ばになろうとしている。結成時25歳だった佐藤もすでに38歳か。
いつまでも若くないのだ。そろそろ年相応の装備を考えなくては。もちろん背負える場所では目一杯背負えばよいのだが。
来年は軽量化して北アルプスをリベンジしよう。そうだ、その前に一度沢でシュミレーションしてみようか!という訳で今回の「ウルトラライト大作戦」決行となった。
今回のコースはU川源流部周遊とした。登山道でピークを踏み、そのまま稜線歩き、支流を下降して本流に到達。源流部に1泊して翌朝詰め上がり、登山道経由でスタート地点に戻るというものだ。究極の軽量化を目指すべく、計画書を作成した。
まずザックは40L以下とした(いつもは80〜100L)。酒は度数に係らず500cc以内(いつもは大量)。ビリーカンは各自1個(いつもは適当)とし、フライパンも5人で1個(いつもは2〜3個)とした。イワナ、山菜の利用を基本とし、調味料も最低限とする。隠し酒、隠しツマミは厳禁。ただし、朝食、弁当用としてフリカケ等は可とした。
私個人的にはエアマットの変わりに5mm厚の銀マットを36Lザックに外付けとし、テン場用のクロックスは持たず、カッパは上着のみとした。焼酎原酒43度を400cc、ウイスキー100cc、刺身パックに付いてきたワサビ、粉末カルパッチョの素、オリーブ油少々・・・うん、36Lでも入るもんだ。
渓美隊初の軽量化作戦、果たしてどんな旅になるだろうか。
車止めでパッキングを済ませ記念撮影。「お〜!みんなザック小っちぇ〜っ!」


ザック小さいでしょ!


ケンジは日帰りか?

まずは登山道をピークまで3時間。結構急な登りだったが、ザックが軽いため楽だった。そこから稜線を歩き、沢を下り、昼前には本流に到着した。ここまででかなり軽量化の効果を実感した。木や藪に引っかからない、ヘツリや滝の下降時、ザックの重さに体が振られない。何よりザックを背負ったり下したりする時に気合いを入れなくてよい。
本流に着いたと思ったら突然雨が降り始めた。人数分のイワナをキープすべく、寒さに震え、鼻水を垂らしながらの釣りとなる。今夜のおかず分をキープし、テン場予定地に着いて愕然!なんと先行者のタープが張ってあった。この先5人が泊まれる場所はあるのか?いっそこのまま詰めちゃうか?今日の装備なら日帰りも可能に思えたが、どうしても沢で酒が呑みたいので佐藤をテン場を探しながら先行する。
かなり源流部まで行ってみたが、適地が見付からずに引き換えし、仕方なく途中目を付けておいたC級ポイントに荷を下した。後続が到着し整地を始める。ふと20mほど下流の藪が気になり行ってみると、大岩の後ろの藪が薄いような気がする。かき分けて入ってみると、もしかしたら以前はテン場だったのではと思える空間が現れた。すぐに皆を呼び寄せ、根曲り竹を刈り払い整地すると、まずまずのテン場が完成した。
夕方になって雨は止んだが、とにかく寒い。早く酒で温めなければ・・・。今日のつまみはもちろん肉ナシ!少々のイワナ料理とケンジが採ってきたフキの味噌炒め・・・渓美隊始まって以来の寂しい食卓だろう。
「あ〜、行動食に柿ピーとか持ってきたかったけど隠しつまみ禁止だからな〜。」と佐藤。
「あるよ、柿ピー!」と私。 
「あっ、いいの〜それ?きったねぇ!」「だってこれ行動食だもん。」「じゃ食っちゃおう!」
続いてケンジが、よく土産屋で売っているよっちゃん銀行発行の「お札焼きかま一億円」をザックから取り出す。
「それってつまみじゃん!」「いいえ、これはマットです!」「マットじゃしょうがないな〜、じゃ食っちゃおう!」
マットを食い尽くすと、またケンジが「これ調味料ですが。」とセブンイレブンのキムチをトンと置く。
「これ完璧につまみじゃ〜ん!」「いいえ、調味料です!」「じゃ食っちゃおう!」
いい大人がまるでくだらない会話なのである。
そんなこんなで疲れもあってか、1人500ccの酒でいい感じに酔っ払って就寝。


駐車場から3時間でピークへ  重荷だったら結構辛かっただろう


国境稜線を歩いて下降点を目指す


狙いはバッチリ  沢を下降する


水うめぇ!


本流に着くと早速釣り開始 (と同時に雨)


おまちゃんが釣る


まにちゃんも


大物はいなかったが魚影は濃い


苦労してやっと見つけたテン場


乾杯!


ケンジは「マット」と言い張ったが・・・美味しくいただきました

翌朝は早起きして撤収。順調に沢を詰め、いよいよ最後の藪に突入する。
ここで再び軽量化を実感した。体さえ通ればザックが小さいので引っかからないのだ。這いつくばっても立つのが楽だし、軽量化はいいね〜。
目標のコルをやや外したが、順調に登山道に飛び出した。
「ウルトラライト渓美隊、作戦終了!!」


2日目  源流を詰める


ザックが小さいのでこんなところも楽々


いよいよ核心部に突入する


藪漕ぎ初体験のため、途中までトップでトックンを課せられたおまちゃん


登山道にてしばし休憩 このあと再び雨となった


あまりにもコ汚い佐藤  「本物」と呼ばれる(←なんの?)


ウルトラライト渓美隊、作戦終了!