イワナパラダイスへ向けいざ!!


                                         報告 斉藤(ヂュン)


*プロローグ*

旅にはストーリーが必要である。
20年前から温めてきた企画でかくかくしかじか、〇〇があったし下からは林道が崩壊していて人が入っていないであろうから、山越えすればきっと美しく厳ついヤマトイワナが我々の挑戦を待ち受けているに違いない。
大分端折るとこんな感じでストーリーテラーこと城野さんから今釣行のお誘いが佐藤さんに届いた。

昨年の納竿の儀からアドレナリンが噴き出すような釣りができていない私はイワナに飢えに飢えているため、城野さんとタマランチ会長こと松岡さんとはお会いしたことがないにも関わらず目の前に落とされたストーリーという甘い蜜のついた鉤を条件反射で丸呑みにしてしまった。
しかし改めて調べてみると遠い。
目的地へ向かうには相乗りをしたいところだが、目的地へ行くには私の自宅だけ辺鄙なところにある。

加えてこう見えて(どう見えて?)私の心臓には一本も毛が生えておらず奇麗なサーモンピンクで、特に初対面の方に迷惑をかけたくない、足を引っ張りたくないという気持ちが強く、城野さんの腕前脚前との差、松岡さんの怒涛のシャレ(本人曰くダジャレではなくザ・シャレ。自称シャレ師)についていけるのか、高橋隊長からはくれぐれも粗相のないように、松岡さんのシャレに怯まず全部リアクションするようにとのお達しがあり、色々と考えていたら不安になってきてしまった。

ところが私の自宅まで迎えにきていただきお会いしてみると、佐藤さんの言葉を借りれば源流マンの中でも国家認定一級常識人で一安心。
道中と2時間ほどの前夜祭ではまだ松岡さんは爪を隠したままだ。
安心しきっていた。この時は・・・

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40オーバーの大イワナをノルマ3尾と課せられ、プレッシャーとなかなかの急登に喘ぎながら推定3時間半の山越え。しかしながら多少の藪漕ぎもありなかなか歩みが進まず渓に降り立ったのは5時間以上後のことだった。
ダム裏の橋の上から望む渓相は異口同音星3つ!!

ずーーーーっと奥まで落差なく癒しの森に囲まれた広くテンカラが振りやすい渓相のように見える。
早く竿を振りたい気持ちを抑えつつテン場適地を探す足取りも軽い。
適当なところで城野さんがテンカラを振ってみる。
振ってみる。振ってみる。振ってみる!!!!、、、シーン。
これだけ良い渓相だしもっと奥にいるでしょうと一旦竿を畳んでテン場を整地。
時は来た!!各人竿を振り始める。ポイントが無数にあり打ち込むのが楽しい。

同時ヒットなんかしちゃったりなんかしちゃったりなんかして、カメラの前でイェ~~イとか言ってキャッキャしておっきいね!何言ってるのあなたの方がおっきいわよとか言ってイチャイチャするイメージはできていた。
そう、イメージだけは。

小魚の群れが走るので水質は問題なさそう。城野さんと私は喰い損ないのようなことが一度あった。
トロを覗くと3尾ほどの魚影が見えるのでいないわけではない。餌に替えた松岡さんにも無反応。
切り替えの早い城野さんはストーリーテラーにも関わらずテン場で焚火を熾して昼寝をすると引き返してしまった。
諦めの悪い3人は納竿を16時半として釣り上がる。というか振り上がる。
尺上と思しき魚影が突っ走るのが見え士気が上がるも今思えば幻覚だったのかも。
タイムリミットが近づくにつれ脳裏で木魚とリンの音がヘビロテ。
ポクポクポクポクはんにゃーーしんーーぎょーーー・・・チーン。

決してシュラフに包まっている城野さんへの当てつけではなく活かし魚籠が重いぜと冗談を言いながらテン場に戻り、宴会の支度もそこそこに乾杯っっ!!
魚はないけどこんな時は持ち寄った肴が一層美味い。今源流界でトレンド(?)の焼鳥屋も開店♪
松岡さんのエンジンが温まってきて徐々に爪を見せ始めた頃、ふらっと城野さんが仄暗くなり始めた景色の中に消えていった。

呑気に松岡さんの講演に耳を傾けていたその時「サツキや!ギンギラのサツキマスや!!」とプロゴルファー猿のオープニングよろしくドヤ顔の城野さんの竿が撓っている。
餌釣りに替えた城野さんが絶好調で、宣言通りその後2尾のサツキマスを釣り上げた。
私もテンカラを振ったが本日2度目のチーン()
それにしても城野さんに騙されたとみんなが諦めていたのに釣ったこと、イワナではないこと、アマゴどころかサツキマスであることに驚いた。

翌朝光が多い中での撮影をしようと夜は捌かないことにし、松岡さんの講演会の核心部へ。
普段から聞き慣れた城野さんの表情筋はピクりとも動いていないが、佐藤さんと私は粗相のないようにとの高橋隊長の言いつけを忠実に守るどころか、要所要所で意図的に織り交ぜられる熊本訛りにも後押しされた巧みな話術に引き込まれる。更に焚火の明かりで怪しい邪教の会合の雰囲気は抜群なので、深淵なるシャレ教にズブズブに洗脳されもはや抜け出せない状況に。
これも城野さんのストーリーに組み込まれているのか?!黒幕は城野さんなのか?!
染まって帰ってこいとは言っていないと高橋隊長に叱られそうだ(滝汗)

アプローチの沢への下降点発見!!(恒例のヤ○セ写真)


帰りにデザートで釣るのも良さそうなんて話していたような


絶賛山越え中


目指したコルで一服


ずーーーっと奥まで釣り場が続きそうな地形


テンソンAGE↑AGE↑


約5時間で渓に降り立つ


早速城野さんが振り始めるも・・・


タープを張り終え、はい本番



タマランチ会長は毛鉤から餌へ変えるも・・・


私も慎重にアプローチするも・・・


ポクチンポクチンポクチンポクチーン・・・ナムナム


とりあえず呑むしかないっすね!!


宴会が始まれば皆笑顔


焼き焼き♪


焼鳥屋開店♪


凶々しいシャレ教の祭典


早朝佐藤さんの声で目覚める。
佐藤さんはタープの右端が寝床だが、なぜかその右側に寝ていた。
前夜は天辺を回るまで会合が続いたのであと1mのシュラフにすら辿り着けないほどだった模様。
すかさず抱き着いて腰を振って恩を仇で返す。これはただの癖なので他意はない。

サツキマスを刺身にして飲まないわけにはいかないので、少しだけジャパンをいただく。
美味い、美味すぎる。十万石饅頭(埼玉県民のソウルCM)

城野さん考案弁当システムの支度をし再び山越え。
普段ならここで終了なところ、今回は大場所が待っている。アプローチの小渓流の堰堤下にゆらめくイワナを全員が見ていた。まさか山越えを2度もして渓流釣りの基本中の基本の堰堤に挑むのかと嘲笑されそうだが、当事者としてはボーズか否かの死活問題。渓に降り立ち釣り下ることに。

例の堰堤はもっと下流だが魚はいる。
良型が見えるようなここぞというポイントは、出来た後輩の私は佐藤さんに譲る。紳士の鏡の松岡さんは竿を出す気すらない。城野さんは撮影に専念。
佐藤さんが良型にアタックしている間に私が可愛い子ちゃんをウェーーイ!ウェイウェイウェーーイ!と釣り上げる。ホッ。
上の堰堤上で這いつくばりながら佐藤さんが立派な立派な、それはそれは立派なイワナを釣り上げる!ぷぷぷ。
その堰堤下で腹ごしらえをして今度は下から再チャレンジ。
もっと良型がいるのは分かっているのだが3投目あたりから城野さんと私は蛍の光を合唱しはじめる。1人が歌い、1人が閉店のアナウンス。

「本日は〇〇渓にお越しいただきまして誠にありがとうございます。当渓は午後3時をもちまして閉渓とさせていただきます。釣りがお済でないお客様は釣り忘れのございませぬよう釣りをお楽しみくださいませ。またのお越しを心よりお待ちしております。本日は・・・」
でぇぇぇぇええい!諦めたら試合終了だ!まだ下の堰堤が残ってるわいと鼻息荒く下の堰堤下を覗き込む。
1寸はあろうかというイワナが悠々と泳ぎ、なんとライズのオマケつき。
各人先程と同じ配置に就く。もし私が店員だったら本当に嫌な客だ。
竿を伸ばす。ガヤの声を頼りに毛鉤を徐々にターゲットに近づけ垂らす。

「ホータールのーひーかーーり、本日は〇〇渓にお越しいただきまして・・・」


サツキマス


身はきれいなサーモンピンク


この刺身が出たらジャパン呑っちゃうでしょ〜


最後までありがたくいただきます


お弁当システム


「年寄りをイジめてこのバカが!」と山越えに熊本訛りで悪態を吐くタマランチ会長


小さくとも嬉しい1尾


「ペターン」と堰堤下を偵察



そーっとそーっと


イワナ見えますか?(笑)


閉店間際のあのメロディーが・・・

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*エピローグ*

旅にはストーリーが必要である。
城野さんにとって今回はあくまでも下見であり、支流や更なる源流域への夢は終わっていない。
ストーリーはまだ始まったばかりである。
私たち3名は騙された騙されたと言いながらも、きっとまた城野さんが描いた甘美なストーリーに誑かされてホイホイついていってしまうのだろう。
でもしばらくあそこはご勘弁願います()

つづく?

追伸
帰宅後自宅と車の鍵を紛失してしまったことに気づき、後日城野さんの車の中から見つかってことなきを得たのですが、メールの遣り取りを今釣行の4名でしていたところ松岡さんから

『鍵が出てきてよかったね。これからは「キーつけてください」。これ、キーワードです。また、日本の山スキーと渓流釣りの「鍵を握る男」に成長されんことを祈念します。』

とのありがた〜いお言葉を頂戴しました。