ここ数年、盛り上がりをみせていたハイキング部の雪山遊びだが、昨シーズンは出動回数大幅減であった。
僕もこの一年は雪のある山へ出かけていない。
みんな仕事が忙しいのか、ほかに悪い遊びでもおぼえてしまったのか、はたまた寄る年波のせいなのか・・・
なんてことを考えていたころ、正月に本沢温泉から硫黄岳へのルートをやろうという話が持ち上がった。
メインはもちろんテントでの新年会だ。

よし！ここは一発、雪山ムードを盛り上げるためにも、料理担当を買って出てナイスな新年会をぶち上げねばなるまい。
なにしろ僕の冷凍庫には、雪山の夜をドカンと盛り上げる必殺のブツが出番を待って眠っているのだから・・・

１月５日夜

今回のメンバー４人が揃い、新年のあいさつもそこそこに八ヶ岳をめざす。
もちろん僕のザックは例のブツに加えて鍋だの焼物だのの食材でパンパンだ。

３時間ほどのドライブで入山予定の駐車場へたどりついたが、じつはもう少し上の方まで車道がある。
今日は四駆で来ているし、ちょっと様子みてみようか。てなことで、かなり雪の積もった細道に突入する。
たしかに、車が通っている形跡はある。
タイヤが空転して進みにくくなってくると、デフロックを入れて再トライ。
どうやらおまちゃんのプロフェッショナル魂に火が付いてしまったようだ。ここまできたらもう引き返せない。
なかなかスリリングな道だったが、素晴らしいドライビングで無事に車止め到着。
ここは標高１８５０ｍ。目指すテン場は２０５０ｍ。
若干登りすぎちゃった気もするが、妙な達成感の中で軽く乾杯して仮眠zzz

６日朝

「いやー寒くてぜんぜん寝れなかったよ〜。だり〜な〜」
「おれ、なんかちょっと風邪気味だ〜」
「テンションあがらないときはムリせず転戦したほうがいいよね〜」
「車でほとんど登っちゃったから歩いてもせいぜい２時間だしなぁ〜」
「やっぱほら、例のブツもキャンプ場の方がゆっくり味わえるってもんでしょ〜」

車中泊には寒すぎたのか、テン場が近いせいなのか、一同揃ってテンション低め＆語尾長めである。
ひさびさの雪山だというのに、なんというていたらく！
しかし全員の意見は驚くほどすみやかに一致し「どっかいーかんじのキャンプ場でもさがそーぜ」ということに決定してしまった。

そうと決まれば長居は無用。苦労して走ってきた林道をさっさとくだる。
めちゃくちゃ揺れるので舌を噛むおそれがあるせいか、それともうしろめたさのせいかわからないが、みな無言である。
これは転戦なのだろうか？それとも敗走なのだろうか？？

さて、本来の目的地からだいぶ離れ、電波も入るようになってくると、途端に元気になってスマホでキャンプ場に目星をつける。まったく現金なものである。

すっかり遠足モードとなって名物の下仁田ネギなど買い込みつつたどりついたのは、やけに小洒落たキャンプ場。
地図を見ると、おまちゃんの家からたった２０分の距離だそうな。まったくなにやってるんだか・・・
しかもおまちゃん、右往左往の運転で疲れはてたのか、いきなりダウンしてしまった。

気を取り直して新年会スタート。
予定のテン場とはだいぶ違うが、飲めば都（ｂｙのぶさん）で盛り上がってきた。

場も整ったところで、いよいよ例のブツの登場だ。
さて、そのブツとは・・・この１０年というもの、岩魚釣りだけでなく海釣りも大好きな僕が血道を上げているあの魚・クエである。
幸か不幸か、ビギナーズラックで最初の年にすぐに釣ってしまったのだが、渓美隊加入以降の９年間は全く手にすることができないでいた。

３日ほど船に乗ってもアタリすらないことがザラのその魚をやっと掛けても、根に潜られたり、８０号ライン（渓流の感覚からすると釣糸というよりタープ張り用に近い太さで、人も余裕でぶら下がれます）をブチ切られたり、しまいにはロッドをへし折られたりと、獲ることができず苦汁をなめ続けてきた。

渓美隊の宴会でも「いつか皆にクエを食わせるから！」と言うばかりで一向に獲物を持ってこない僕は、過去の栄光にすがる男、あるいは単なるホラ吹きと思われていたふしがある。

今回の獲物は駿河湾の、しかも、味が一番よいといわれる３０kg手前の上物だ。
自分の腕で獲ったというわけではなく海からの授かり物と思っているので、皆と喜びを分かち合うことができれば最高だ。

今宵のメニューは、刺身、皮や胃袋の湯引きに始まり、鱗の揚げ物、焼物、ムニエル、そしてもちろん鍋、締めにはクエ出汁のラーメンまでフルコース。
料理が下手でも素材の力でみんな笑顔になってくれた。
宴も最高に盛り上がり、幸せな気分で酔眠zzz