今年の盆休みは8/10～8/18と最大で9連休。その連休の頭に更に有給休暇を付けて他パーティーと差をつけて3泊してしまおうという贅沢プラン。私の勤務先では普段有休を取得する人が少なく、取りづらい空気が年間を通してドンヨリドヨドヨと漂っているが、昨今の働き方改革の恩恵で年間最低5日取得しなければ会社にペナルティが課せられるとのことで、私の場合休んだ分丸々仕事は溜まって自分に返ってくるけれど幾分取得しやすくなった。隊長の高橋さんのように部下や後輩が取りやすいようにと手本になるべく進んで休む上司が欲しい。

「今回は３泊ね！①完全遡行、②釣りは美味しいところだけにして支流から稜線へ脱出、③某所ベースで釣り三昧。ヂュンがやりたいことを優先しよう！」
甲乙つけがたいカードが並べられた。
涼しく、アブが居なくてイワナが多い。そんなパラダイスへの避暑釣行、どのカードを引いてもババはない。達成感を優先するか、釣りと遡行の良いとこ取りか、はたまた一心不乱に釣り三昧か。う～～ん悩ましい。結局参加予定メンバーの都合等諸々あったことも関係しているのかいないのか釣り三昧のカードを引いた。

初日は高橋さんと私の2人。2日目に久々参加の副隊長のケンさんが後追いで合流してくる。渓美隊にとって源流釣行は祭と捉えている面もあり、多いと10名前後が参加することがあるが、みんな家族サービスや仕事で忙しいのだろう、例年盆休みは参加人数が少ないように思える。

かくいう私は前回の源流パトロール(釣行レポート)で書かれてしまったが、今年5月に籍を入れたばかりの新婚だ。しかし「釣りは生き甲斐である。生き甲斐を奪われては生きている意味がない。誰が何と言おうとオレは釣りに行く！」と入籍前から生き甲斐について妻にヘッドギアを付けて洗脳している。本当は高橋さんの誘いは絶対で断るわけにはいかず、泣く泣く家庭を犠牲にしているのである。

みんなとワイワイできないのは寂しいが、釣りにフォーカスするなら少人数の方が好都合。そんな下心もなくはないけれど、釣り以外にも人数が少ないからこそのことがある。渓美隊に入隊して丸４年、依然渓での生活術や料理など満足にできるようになったことが少ないように思える。夏期講習として補習科目をじっくりと復習できるチャンスでもある。以前とんでもなく焦げ臭くてク○不味い飯を炊いてしまい、もう二度と佐藤さんに「ヂュンの炊く飯はサフランライスみたい＼(^0^)／また食べたいなーヂュンのサフランライス＼(^0^)／」なんて言われるわけにはいかないのだ！

課題は尽きないが楽しい楽しい夏休み。競争相手はいないようなのでリラックスして　まずは仮眠だ。

1時間半ほど仮眠しモゾモゾと起き出し支度を始めた。まだ車は私たちのものだけだ。適度な気温で汗ビチョになることもなく、アプローチを快適にこなし3時間でダムに着いた。目的のテン場までは平水時の最短であと3時間はかかるが、一目瞭然で水量が多い。我々が奥まで行けば翌日合流するケンさんは1人でこなさなければならず危険だし、夕方から降る予報の雨量が気になる。山岳気象予報サイトは私が普段見ているもの以外は結構降るような予報を発表しているので高橋さんの表情が硬い。奥のテン場前はあっという間に2ｍくらい増水してエスケープができないとのこと。釣師の性で奥へ奥へという拭いがたい衝動に駆られるが、老獪な釣師である高橋さんには策があるようだ。冒頭の案のどれにも当てはまらないが素直に従い何しろ安全第一で。釣れまくって進まない気がするなーなんて話しながら、初日はとりあえず手前のテン場に雨に備えてやや低めにタープを張った。

ほぼ毎週釣りはしているが、毎回仕掛けを繋ぐ時間から第１投までが特にワクワクする。上手い人ほど焦らずゆったりと準備しているように見えると以前尾亦さんが言っていた。私はあくせく準備をし、誰よりも早くキャスティングをすることが多い。スキルは勿論配慮も足りないしまだまだだ。2人だしすぐに交代すればまぁいっかと今回も同じである。高橋さんの視線を感じて振り返ると私のことなど見てはおらず、まだテン場で仕掛けを繋いでいる。そんなことを半分、もう半分は対岸のポイントに打ち込むことを考えながらキャスティングをしていると早くもグンッと強い引き。下流に走られたが焦らず手繰り寄せてみると初っ端から尺上♪こいつぁ幸先が良い。増水気味なときは大物が釣れると春の源流釣行時に話題になっていただけに、高橋さんの策がわざわざ奥に行かずともということと理解する。同じポイントにまだ居るような気がしてもう一度毛鉤を落とすとまた良型。えーと、んーと……、でぇぇい言ってしまおう！控えめに言ってスーパー楽しい＼(^0^)／早くも満たされ始めた。暫く釣り上がると流れの重い渡渉点がある。身長6尺の私で深さは股上。一度チャレンジしてみたがかなりしんどいのでスクラムを組むことにした。「イッチニッ、イッチニッ」タイミングを合わせるため声を出しながら渡った。その後もテン場で話していたことがまるで予言として当たったかのようになかなか進まない釣りが楽しめ、高巻きのポイントに着く頃には釣果は十分。水量は相変わらずなので深追いせず納竿とした。

テン場に戻りしばし昼寝タイム。私は支度が遅い方で、宴会前に散らかった荷物の整理をいつもこのタイミングでするので昼寝時間が短くなってしまうが、タープの下でまったりするこの時間が好きだ。6月にタバコをやめてしまったので手持無沙汰で、結局昼寝をすることにした。

16時になりイワナを捌くことに。以前自分で包丁を砥いで全く切れない状態にしてしまい、イワナを捌くとボロ雑巾のようになってしまい「やれ包丁職人に謝れ、やれイワナに謝れ」とコケにされ腸抜き以外はいつも先輩方にお願いしていたが、もう砥ぎに出して復活したので切れる切れる♪少しはコツも分かってきたのでもう謝らなくても良さそうだ。最近は渓美隊Jr.の青さん(青柳)とさかもっちゃん(坂本)の成長が著しいので、いい加減あれはできないこれもできないのないないキャラを卒業しなければならない。アドバイスを受けながらなんとかこなし、仕上げの盛り付けはいつも通り高橋隊長にお願いした。

刺身ができたら待ちに待った乾杯！
良い釣りができた日のファーストごっくん❤は格別だ。

いつものように歌ったり流木ギターをかき鳴らしたりはないけれど、これまでの源流釣行の思い出や行きたい源流リスト、テンカラ、ポチリスト(通販サイトのカートの中身)などについて話しながら心地よい時間が過ぎていく。時刻は20時半。予報では16時くらいから雨予報だったのですっかり安心していた。手洗いに立ったときに上流の空はどうだ？と聞かれ、夜なので当然暗いながらも雲の様子を伺おうと目を凝らす。露骨な雨雲は見当たらない。と思ったのも束の間、パラパラと降ってきたのと同時に辺り一面ストロボを焚いたように不定期に光り始め、間もなく一気に降り出した。宴会場をタープ下に引越しするのが間に合い、ランタンの灯りを頼りに激しい雨音と雷鳴、ストロボの景色を肴にしばらく飲んでいたが、珍しく先に高橋さんが落ちた。後で聞いたが増水の心配がない場所なので安眠だったそうだ。私はまともな雷雨や増水を渓で経験したことがないので新鮮だったが、すぐに睡魔にKOされた。