報告 ヂュン


なかなか梅雨が明けない。ぼんやりと窓外を眺め、昔バラしたグラマラスな渓魚を思い憂う。連日天気予報と睨めっこをするが、女心のようにコロコロ変わる予報の変化に一喜一憂する。4連休の頭に有休をぶち込む暴挙に出ただけになんとか良い釣りがしたい。今年の渓美隊恒例梅雨明け源流釣行は元々福島県の某河川への釣行予定だったが、水量が多いとシャレにならない事態に陥りかねないので、急遽釣行先をその名の通り懐の大きく深い大深沢にGoToトラベルキャンペーンとなった。

大深沢といえば八幡平。小1のときに家族旅行で連れていってもらい、真っ青の空と深い緑に感動し、大人になり何度もドライブやツーリング、ハイキングで訪れている。
特に印象に残っているのは、昔廃墟巡りにハマっており、松尾鉱山緑ヶ丘アパートが特にお気に入りの廃墟であった。探訪を終えバイクに跨り、更に北上するためキャンプ地を目指す。
名残惜しくスノーシェッドの隙間から緑ヶ丘アパートに目を移す。と、下りの右コーナーでバイクの制御が利かなくなる。咄嗟にバイクから左に飛び降り、無人のバイクは安定感を取り戻し、直立したまま10mほど走りスノーシェッドの内壁にぶつかりガシャンと音を響かせて虚しく倒れた。
右膝を強打し流血している。バイクはクラッチレバーが半分折れている以外は大きな問題はなさそうだ。転倒したバイクはなかなかエンジンがかからない。センタースタンドを立て、激痛に耐えながら何度もキックを繰り返してエンジンに火を点けた。とにかく人を探すがどこにもいない。トウモロコシ畑に迷い込み、Uターン中にまた転倒してしまった。エンジンを切り、バイクを起こし、再びキックを繰り返す。精肉店を見つけ病院はどこですかと飛び込んだときの店主の顔は忘れない。割と近くに病院はありすぐに数針縫ってもらった。看護師さんがみな明るかった。やむなく南下し仙台へ。血が滲んだズボンを履いたまま脚を引きずりビジネスホテルに辿り着く。ゾンビのような私を見たフロントの男性の顔も忘れない。東本昌平の漫画「キリン」に出てきそうな今となっては良い思い出。
とまぁ個人的にはこのような思い出が日本各地にあるのだが、事故だけは勘弁なのでご安全に。

1日目

23時半に集合場所に落ち合う。おじさんたちにとっては深夜同然なのにみなテンションが高く元気そうで何よりだ。荷物を積み替え東北道をひたすら北上する。とことどころかなりの雨に打たれるのでこの先の行程が不安でならなかったが、6時半、車止めに着く頃には雨は上がり、快晴には程遠いが渓美隊名物80Lデカザックを担いでの山越えには調度良い天候だ。

快適に高度を稼ぎサクッと稜線着。下降点まで歩みを進め、この藪に突っ込むのかと白目。高橋さんから目を逸らしたものの(そもそも白目なので目が合わない)「まだ藪の洗礼を受けていないヂュン、行け!」と。「言っていませんでしたがオレにだって残雪期の登山で猛烈な藪漕ぎの経験あるんですよ」と心の中だけで抵抗したが「はい!自分に突入させてくださいであります!」と半ばヤケになって背丈以上の藪に突っ込む。下りなのでまだマシだが、右だ左だと誘導されデカザックを藪に食い込ませていく自分の顔はプロレスラー永田裕志の白目の不動明王が降臨したようだ。やがて沢型が出てきて雨も降り出し濡れ鼠となった。意外に長い下りに飽きてきた頃に大深沢本流に降り立った。今回のテン場はあまり快適とは言えないが贅沢は言っていられない。協力してタープを張ればあっという間に立派な宿と宴会場の完成だ。

初日は軽くオカズ釣り。ボスの高橋さんは昼寝をするから22人で分かれて行って来てらっしゃいと。ここまで来て釣りをしないとは流石大人の余裕といったところか。

私は佐藤さんと組むことに。釣り始めると早速腹が見事なマンゴー色のイワナが毛鉤を咥えてくれた。

約束の時間にテン場に戻る。ケンさんとマニさんも良い釣りができたようだ。薪が少ないので探しに行くが大した成果は得られなかった。ここまで進めばこの後の段取りは決まっている!「イワナ捌いて〜〜、呑む!!」ケンさんは約1年ぶりの釣行だが、今回も3Lワインを担いできてくれた。


雨とガスで視界不良の中、登山道利用で下降点へアプローチ


剛毛ビッシリ(゚Д゚;) 恐るべきクマの破壊力!


クマの痕跡だらけの登山道から藪へ突っ込む


テン場を設営したら早速釣りへ






初日のカンパ〜イ!!


これが渓美隊名物 3リッターワインだ!



源流パスタの正しい食べ方

2日目

4時過ぎ。珍しく(多分初めて)最初に目が覚めた。昨晩は24時近くまで呑んでいたのに目覚めが良い。食器を洗っていると次々に起き始めた。今朝はご飯を朝飯と昼食の弁当分で8合炊く。佐藤さんと4号ずつ炊くことになった。実は私、こちらの源流レポートで何度も触れているが米炊きはトラウマになっている。言い訳になってしまうが微調整の利かないバーナーを使い炊いたご飯はサフランライスと揶揄されたことも・・・。人と違うものを使いたいとその後購入したバーナーも微調整が利かず、米炊きは佐藤さんやオマさんに任せてしまっていた。今回は佐藤さんが20年ほど愛用しているものの後継機を購入したので問題なく炊くことができたと言いたいが、本当は佐藤さんが隣で付きっ切りだったからといえよう。

腹ごしらえをし、弁当を持ち、さぁ待ちに待った釣りメインの1日だ。高橋さんとケンさんは上流へ、佐藤さんとマニさん、私は下流と支流を探ってみることに。
魚はうじゃうじゃだがサイズが全く上がらない。多すぎて餌の取り合いが激しく大きくなれないのか?それでも釣れないよりはよっぽど良い!

名物のナイアガラの滝は威圧感はないが優しく包んでくれる感じが素晴らしい。
滝を巻き終えると佐藤さんのカメラがないことに気づく。佐藤さんはカメラを探しに戻ると。テン場に戻る約束の時間は過ぎている。渓美隊一屈強な漢なので1人でも大丈夫だと思うが、テン場も近いことだしヂュンは魚を持って帰って事情を高橋さんたちに報告せよということでマニさんも佐藤さんを追いかけた。テン場に戻り一段落したころに佐藤さんとマニさんが帰ってきた。カメラは・・・無事マニさんが発見!!
2011年の大深沢では最後にハマった激烈な詰めの藪漕ぎ中に高橋さんがカメラを紛失してしまったとのこと。何かの因果関係でもあるのだろうか。上流組も型はイマイチなものの良い釣りができたようだ。ではでは本日も「イワナ捌いて〜〜、呑む!!」今夜だけは佐藤さんはカメラ救出大感謝祭としてマニさんに頭が上がらないようだ。


2日目のお弁当♪


高橋、菊地は上流へ




色鮮やかな大深沢のイワナ


下流組の釣果






関東沢を釣った後は本流を釣り上がる


ナイアガラの滝で記念撮影


手前に宴会用タープも張ってあるので、多い日も安心(´∀`*)ポッ


でもって2日目もカンパ〜イ!


2日目の山でホタテを食すという贅沢


こちらは菊地副隊長定番の「日替わりパスタ」


隊長 最近の定番「イワナの昆布締め」


最終日の夜は更けて・・・

3日目

全身バキバキ。ロボットのような足取りで河原に向かう。大ビリーの蓋を洗っていると取っ手が片方ないことに気づいた。「これ誰のですか?オレが無くしちゃったかもしれません」と隣で手伝ってくれていた佐藤さんに尋ねると「それケンちゃんの!10年くらい前からその状態だから気にしなくていいよ」と。ケンさんやはり只者ではない()

高橋さんがテン場出発時間を8時に定めるが即「ま、ムリだろうけど」と無表情で自分で否定したのが面白かった。というのも渓美隊は朝から食事に力を入れ過ぎてしまう傾向があるからだ。米炊きを無事済ませ、メンパ弁当をこしらえ、テン場撤収時に陥りやすい片付けられない症候群になることもなく8時半にはテン場に礼!と出発することができた。

今回は11年前とは違うルートで詰めてみようということに。前回とはルートは違うが激烈な藪にハマった過去の話は何度も聞いているので、大丈夫大丈夫と言われても不安は拭えない。暫くはなんてことない沢歩きで景色を楽しむ余裕もあったがそれほど大きくはない2段の滝が現れた。巻くか右岸をへつるか泳ぐかで悩む。2度高巻きを試みるがどちらも険しいのでロープを出してへつることに。佐藤さんがサクッとリードしてくれた。

結構時間を食ってしまったが、その後は源頭の雰囲気に浸りつつ慎重にルートファインディングをしながら稜線に詰め上がった。個人的には何度も話を聞いていた11年前のような怒濤の藪漕ぎを回避できて心底ホッとした。湿原に咲くニッコウキスゲを愛でながらおじさん5人は見晴らしの良い場所まで移動した頃にはシャリバテ寸前、朝仕込んだ弁当をいただいた。パリッと晴れてはいないが北東北の優しい山並みが素晴らしい。

また印象深い八幡平の思い出が増えた。初日の夜には次はどこに行こうかなどと話していたことをうっすら覚えている。今回も良きフィールドと良き仲間に感謝!!


下山弁当〜♪


今回は東又沢を詰めて帰ります!


途中1ヶ所だけあったアトラクション


源頭は近い!


40歳〜56歳 まだまだ元気です!


登山道へ出ると お花畑がお出迎え♪


ニッコウキスゲに癒されながら・・・


天候も回復し、気持ちの良い登山道歩きができた


「松川温泉 松楓荘」 よい温泉でした
(^o^)