2007年6月8日〜9日
白戸川源流メルガマタ沢
(伊香保乗っ越し!?)




メンバー:高橋 光春(千葉軍団)・高橋 信博





               報告・写真 高橋 信博


「信ちゃん、メルガマタ行ってみない?」
「メルガマタって、もしかして袖沢乗っ越し?いいっすね〜、行ってみたかったんですよ〜!」

出発前夜、私は伊香保温泉で宴会の予定が入っていたのだが、みっちゃん(高橋 光春)が宿まで迎えにきてくれることになった。
1次会、酒は控えめにしとかなきゃと思いつつも、コンパニオンのオネーチャンに注がれるままに、いや注がれる以上にビール、熱燗、冷酒、焼酎、そして2次会...

すっかり出来上がったところにみっちゃん登場、ベロンベロンで助手席に乗り込んだ。外はバケツをひっくり返したような雨、しかし関越トンネルを過ぎると小降りに、どうやら新潟はあまり降らなかったようだ。
奥只見の駐車場に到着、みっちゃんの大イビキに一睡もできないまま朝を迎え出発となった。

「袖沢渡れるかなぁ・・・」 この日から3日間の天気予報は雨、しかも局地的
に豪雨になるという。メルガマタに行くには袖沢を渡らなければいけない。
渡渉がギリギリなら、そのまま林道を歩いてミノコクリでもやるか他に転戦することになっていた。南沢を過ぎ、乗っ越しの沢の対岸に到着、袖沢は雪シロでゴンゴンだった。

まだ昨夜の酒の覚めやらない私はあきらめモード、しかしみっちゃんは燃えていた。
「待ってて、見てくるから!」しばらくすると、「渡れそうなとこあったよ!」
200メートルほど下流だが何とか渡れそうだ。しかし流されたら助かりそうもない。スクラムで渡渉し、右岸を慎重にへつってようやく乗っ越しの入り口に立った。歩きはじめて間もなく足元をイワナが走る。しばらくは穏やかな流れに時々小滝で、ウルイやフキノトウを摘みながら快適に登っていく。

雪融けの袖沢を渡渉し乗っ越しを目指す               
やがて雪渓が登場。20メートルほどのトンネルを足早にくぐって通過。沢はそのあたりから連爆帯となりどんどん高度を上げていく。
初めての沢で山越え、地図とコンパスを見ながらの遡行は楽しいが疲れるものだ...しかしなんたってメルガマタ...この神秘的な名前の響き、イワナの桃源郷...よし、気合だ〜っ!って感じだった。まだこのときは...

   
最初はこんな感じ                              ぐんぐん登る
やがて乗っ越しの尾根に到着。メルガマタへ向かって、まだ雪の残る小沢をおりていく。
最後の雪渓がいやな感じだ。両側は2メートル幅で切り立った泥壁で、全体が薄い雪で覆われている。20メートル先で右にカーブしていてその先の様子はわからない。ところどころ穴が開いていて深さもわからない。少ない手掛かりをつかみ、なるべく雪渓に体重がのらないように、ピンソールを泥壁に押し付けながらトラバース。穴の開いた薄いところを通過しようとしたところ、後方で「ボコッ!」と鈍い音。
みっちゃんの足元が抜けて雪渓にスッポリと胸まではまってしまった。やはり体重オーバーか!

「抜けられそう?」 「うーん、身動きもできないし足も下についてないな。」
私もセミ状態だがこのままではどうしようもない。恐る恐る戻って潅木に全体重を預け、雪渓に向かって「必殺ピンソール・キック」を10発ほどお見舞いする。

開いた穴から腕を抜いてザックを外して下に落とし、みっちゃんはようやく雪渓入り口まで戻ることができた。私はそのまま泥壁を無理やり登って雪渓を丸ごと高巻く。ああ疲れた...

   
地図で現在地を確認                       スノーブリッジを潜る
  
そしていよいよご対面〜っ!メルガマタは滝で出合ってゴルジュ状、やはり雪シロで濁っていた。滝のすぐ手前の左岸にテン場跡。傾斜が強く居心地は悪そうだが増水時の撤退を考えてここに泊まることにする。荷を降ろし釣りの準備をしていると、今までピーカンだった空が急に暗くなってきた。

「やべ〜っ!なんでだよ。」昨夜の伊香保の豪雨が頭をよぎったが、とりあえず釣り、とメルガマタに降り立った。この水量と濁りではテンカラはお手上げ、エサ釣りのみっちゃんに先を譲る。20メートルほど釣り進むと早くも泳がないと通過できそうもない場所。空は真っ暗、気温も低い、遠くでカミナリ様もゴロゴロ...
「オレもどってるわ、オカズよろしく!」 「オレも帰るよ!」であっさりUターン。

タープを張っていると一気に雨が降り出した。まだ2時だが仕方がない、軽〜く一杯やってお昼ねタイム。しかし、大イビキに加えテン場が傾斜しているため、あの巨体がこちらに転がってきて押し出され、タープの端から雨が顔にかかって・・・え〜い眠れやしねーっ!

カミナリはドッカンドッカン、小沢もメルガマタも濁流、みっちゃんは引っ叩いても起きない。「あ〜ぁ参ったなぁ〜」なんて思っているうちに、いつしか眠りにおちていた・・・。


こんなにいい天気だったのに...
夜7時頃、ふと気配を感じて目を開けると、みっちゃんがドロまみれで呆然と立っている。聞くと、寝ぼけて(酔っ払って)テン場から沢に転げ落ちたという。

右足の土踏まずがザックリ切れているが、そちらはそう痛くないらしい。
「やっべ〜っ、左のヒザやっちまった!痛くてまがらないよ。」 天気もそうだが今回は山の神様の機嫌が悪いようだ。こんなときは長居しないほうがいい。

「みっちゃん、明日の朝、足が動いたら下山しよう!」 「・・・そうだね、でも歩けるかな〜。」「あ〜、もう歳だな〜・・・。」みっちゃんとの付き合いももう長いが、こんな弱気な彼を見るのは初めてだ。結局その夜は一晩中カミナリとタープの水かきでほとんど眠れなかった。

翌朝は早めに朝食を済ませ帰り支度をする。以前歯医者でもらった痛み止めを飲ませ、テン場をあとにする。酒も食料もほとんど残っているのでザックが重い。再び強い雨が降り出したが下りに入ってやがて止み、心配したヒザもそれほど痛まず、3時間ほどで袖沢出合いに戻ることができた。
   
慎重に下っていく                         帰り道、この手前の雪渓がヤバかった

袖沢の水量は昨日よりやや多く、濁りも強くなっている。昨日デポしておいた30メートルと15メートルのロープを連結し、スリングを捨て縄にして無事ザイル渡渉完了。南沢でラーメンを食べて車止めへと向かった。シーズン最初にしてはハードな釣行、いや山行だった。

   
あ〜、これ渡るのかー                          土俵の鬼、もとい「渡渉の鬼!」

銀山平で温泉に浸かり帰路についた頃、再び強い雨が降り出した。下山はよい判断だったようだ。
「リベンジしなくちゃね〜!」 「そうだね、また来ましょう!」

今年もまた「源流」が始まったのだ・・・
あっ、そういえば釣りしてね〜っ!