報告 菊地 顕一




〜プロローグ〜

外秩父七峰縦走ハイキング大会・・・。


ハイキングという、のどかな響きとは裏腹にフルマラソンと同じ42.195kmを歩くという両極端な2面性を持ち合わせた、我々にとっては未知の大会。
久しぶりに渓美隊のメンバー全員が集まるこの大会で、我々は当然「完歩」をし「健脚揃いの渓美隊」の名を源流界に轟かせようと密かに企んでいる。


〜前夜祭〜

前日の4月19日は仕事で出勤。 ふと会社のパソコンから渓美隊のサイトをのぞいてみると作戦会議室(掲示板)に高橋隊長からの書き込みがあった。
「夜は佐藤が泊まりにくるよ。やっちゃう(呑っちゃう)?合宿・・・明日に影響しないように軽く呑る予定です。軽〜くねっ・・・。」
いや〜、前日の合宿はマズイっしょ〜!軽〜くっていってもいつものパターンでどうせガッツリ呑んじゃうんだから〜。と思いつつも、渓美隊発足当初の3人が久しぶりに集まるとなれば行かない訳にはいかない。 仕事をそそくさと片付け、いったん家に帰り翌日の支度をし、お泊りモードで隊長宅を訪れた。
すでに合宿(宴)は始まっており、テーブルの上には「島らっきょう」や「チラガー(豚の顔の皮)」といった沖縄の食べ物が並んでいる。そうそう、隊長夫妻は新婚旅行で沖縄に行っていたんだっけ。 ビールで乾杯! その後は沖縄といえばもちろん泡盛!残波の43度をグビッと呑る。「くう〜、キク〜ッ!」
スパムハムを使った本格「ゴーヤチャンプル」や「カツオの刺身〜行者ニンニク醤油」 勢いあまって「ペンネ・アラビア−タ」まで作ってしまった。これだけツマミが出てきたら、もう明日のことなどカンケーない。とことん呑るだけだ・・・。 合宿は12時過ぎまで続き、いまさらながら明日のことを考え皆眠りについた・・・。
夜中の3時頃、隊長がトイレに起きたとき事件は起こった。 トイレのドアを開けっ放しでズボンを下げたまま便器に座って眠るワタシがそこにいた。
「けんちゃん風邪ひくよ、布団で寝たら?」
「ほ〜れふれ(訳:そうですね)」  いつもの光景だ。
下半身丸出し・・・無防備な姿で撃沈・・・相変わらずなのである・・・。
 
まずはビールで乾杯                            チラガー(上)、ゴーヤチャンプル(左)、カツオの刺身(右)

 
隊長宅を、まるで自分ちのようにくつろぐ菊地と佐藤


〜七峰縦走〜

朝4時に隊長に叩き起こされ、酒のにおいプンプンで川越駅発5時28分の東武東上線に乗り込む。 乗り込むと色とりどりのウエアを身にまとった中高年の姿がやけに眩しい。今日は中高年ハイカーにとって年に一度の晴れ舞台なのである。
6時を少しまわった頃、小川町駅に到着。スタート地点には受付を待つ人で長蛇の列ができている。我々は「先は長いんだからゆっくり行こ〜ぜぇ〜。」などと、コンビニおにぎりをパクつきながらゆっくりトイレを済ませ、まったりと受付に向った。しかしこれが後で命とりになろうとは・・・。
スタートから一峰目の官ノ倉山を目指しガンガン歩く。街中を通り抜け、森に入っていくとひっそりと静かな道が続いている。気分も良くいいペースで歩いているといきなり大勢の人が立ち止まっている。「なぬっ?」石尊山山頂手前の急登で渋滞が起きているのだ。
ここの通過に30分も費やしてしまった。これだけ人がいればしょうがないと思うが、スタート地点での長蛇の列はこの渋滞を避けるために早く出発するためのものだったのかと後悔する。



ここから渓美隊の七峰縦走が始まる・・・

  
気持ちよい春の日差しを感じながら歩く                  石尊山山頂手前の急登 いきなり渋滞

 
渋滞にウンザリする隊長                          変なオジサン発見!
  

石尊山山頂 見晴らしはいい!


石尊山山頂で写真を1枚、2枚撮って先を急ぐ。第一チェックポイントの官ノ倉山手前でまたもや渋滞。ここは東武竹沢駅からのルートとの合流点になっていて、山頂が狭いものだから人が多ければ当然渋滞ポイントになる。南斜面を車道に下るまでの間ず〜っと渋滞で、ここの通過にも1時間近く費やしてしまう。急にテンションが下がりだんだんヤル気がなくなってきた・・・。
車道に下りてから舗装路をテクテク歩き、和紙センターで一服する。すいとんやビールが売られていて「ゴキュッ、プハーッ!」と気持ちよさそうに飲んでいる人がいた。心がかなり揺れたが、今回は完歩しなくてはならないのだ。ガマン、ガマン・・・。

  
和紙センター  出店が出ていてどれも美味そうだった               車座になって一服 まるで渓のよう


特注 川越渓美隊キャップ

和紙センターの裏手から二峰目の笠山を目指す。山の斜面をダラダラと舗装路が続き、いいかげんうんざりしてきた頃、萩平に到着。ここから登山道に入るが、笠山山頂まで標高差で約500mの急登が続いている。
登りはじめて程なくすると早くも心臓がバクバクしてきた。「コンチクショー!コンチクショー!」と、こんな低山なのだが野口健の「100万回のコンチクショー」を思い出しながら一歩一歩足を進める。すると何やら後ろから「ほっ、ほっ、ほ〜!」と奇声を発しながら勢いよく登ってくる輩がいる。まにちゃん(馬庭)だ!! 彼は4月初旬に行った大持山での七峰縦走に向けた足トレで太ももを吊って以来、毎日毎夜WiiFitと藤崎マーケットのラララライ体操で足腰を鍛錬してきたらしい。その成果がでたのであろう、あっという間に追い越されてしまった。 さらに後ろを見ると荒ちゃん(荒船)も登ってきた。彼も昨年末の武甲山でのメタボ腹に終止符を打ち、この大会に6キロの体重減を成し遂げての参加である。みんなそれぞれ努力しているな、オレも負けてはいられない・・・。「コンチクショー!」と心の中で叫びながら、なんとかノンストップで笠山のチェックポイントまで辿り着いた。

 

 
いたるところに花が咲き乱れていた

ほどなくして皆到着。 山頂で少し長めの休憩を取り、第三のチェックポイント堂平山に向けて出発する。笠山峠を過ぎ、しばらく歩くと目の前がパァ〜っと開け、一面緑のじゅうたんで覆われたような景色になる。少し先に天文観測所のドームが見える。堂平山のチェックポイントだ。
記録カードに3つめのスタンプをもらい、いまどのあたりなんだろうと地図を広げていると、何の脈略もないが急にビール飲みながら焼肉が食いたくなってきた。そのことをポツリと漏らすと誰かが「なんかもう歩くの飽きてきたなァ。」「そ〜だよなぁ、ずっと山なんだもん、川がないんだもんなぁ〜。」とか言い始める。 でもね、縦走ハイキングってな訳だから、川がないのは仕方ないですよ・・・。
そんなムードの中、一気にみんなのモチベーションが下がり、作戦会議が始まる。
「どうする〜?」
「なんかホントにもう歩くの飽きてきたよなぁ。」
「しょせん俺達は沢筋でないと生きていけないんだよ!」
「そうそう、山歩きだけじゃねぇ。焼肉食いに行こうぜ、焼肉♪」
てな訳で、あっさり七峰縦走中止が決定。まだ一人で頑張るという荒ちゃんを見送り、剣ヶ峰チェックポイントでスタンプをもらい、白石峠から下山する。
渓美隊にとって初挑戦の「外秩父七峰縦走ハイキング大会」は幕を閉じた・・・。 断っておくが我々は決して「敗退」したのではない・・・。あくまでも「歩くのに飽きた」だけなのである・・・。


 
笠山峠                                    いつもとは違った凛々しい顔の馬庭

 
作戦会議 このときには皆頭の中は焼肉でいっぱい                      白石峠からのんびり下山する

 
帰りの電車で・・・まだ余裕のあるおじいちゃん
 

〜後夜祭〜

「山から下りたらオ・ニ・ク♪」これが渓美隊の合言葉である。 25kmを歩き、1,240kcal(オムロン万歩計調べ)を消費した体が極上のオニクを欲している。
お疲れさん会は、隊長が長年かよっている北坂戸の「炭火焼肉ホルモン屋」で行うこととなり、夕食の準備で参加できないという貝好さんと別れ、5時の開店と同時に店に飛び込んだ。
ここ「ホルモン屋」は肉が新鮮でとても美味く、値段も安い。なおかつマスターがイケメンといった3拍子揃った、そんじょそこらにはなかなかないお店なのだ。
いつものとおり、ハラミ・クダ(心臓の根元の管)・テッポウ(直腸)といったモルホン系をガンガン注文する。 焼いては食い、食っては焼き、そして焼酎をグビグビ呑る。焼酎ボトルの2本目を空ける頃、いつの間にか外も暗くなり、体が心地よい疲労感に包まれる。
「そうだ! 明日は出勤じゃん!!」
まだまだ呑っていたいところだが、今日のところはそろそろ切り上げよう。 隊長の締めの言葉でホルモン屋を後にした。


  
ここが北坂戸の名店 「炭火焼肉 ホルモン屋」

 
まずはビールで乾杯♪ のどを潤す                   早く焼けないかな〜

 
食べるほどに呑むほどに酔いがまわり・・・               まにちゃんに「あ〜〜ん」してもらう


〜エピローグ〜

第23回外秩父七峰縦走ハイキング大会・・・。
我々は決して敗退したのではない。途中で止めたのはただ単に「歩くのに飽きてしまった」だけなのである。何度も言っておきますが・・・。
来年残りの山を歩いて2年連続であれば完歩賞を認めてもらえるらしい。 とりあえず「健脚揃いの渓美隊」の称号は来年まであずけておくことにしよう。
あ〜ぁ、来年もやるのかぁ〜・・・。